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METAL HAMMER JAPAN 編集部ブログ

エヴァネッセンス & ウィズイン・テンプテーション 【メタルハマー・ジャパンVol.1より】

エイミー・リー×シャロン・デン・アデル
シーンを代表する女性シンガーの初対談

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このシーンを代表する女性シンガー、エイミー・リー(エヴァネッセンス)とシャロン・デン・アデル(ウィズイン・テンプテーション)。ふたりの対談は本国『メタルハマー』328 号の表紙特集として行なわれたもの。デビュー・アルバム『フォールン』(2003年)が大ヒットし、“女性シンガーによるヘヴィロック”のアイコンともなったエヴァネッセンスはアメリカのバンド。片や、よりシンフォニック/ゴシック要素を強く打ち出すウィズイン・テンプテーションはオランダのバンド。双方ともに、その美しくもダークな世界観によって英国を始めとする欧州では高い人気を持ち、日本での活動規模に比べ大きくピックアップされることも多い。

Text by Dannii Leivers Photo by P.R. Brown  Original by METAL HAMMER 328 Interpretation by Mirai Kawashima

 

初めてエイミーと会ったあと 感情があふれて鳥肌が立ったわ(シャロン)

 21世紀におけるメタル界のアイコン、エイミー・リーとシャロン・デン・アデル。彼女たちがそれぞれ率いるエヴァネッセンスとウィズイン・テンプテーションは、2019 年8月~9 月にスイスのアールブルクで開催された“リバーサイド・オープン・エアー2019”にて、ダ ブル・ヘッドライナーとして同じステージに立った。そして2020年春、ついに歴史上初めてウィズイン・テンプテーションとエヴァネッセンスが一緒にツアーを敢行。日程には超人 気バンドだけがプレイできるロンドン最大のO2アリーナも含まれる。 “リバーサイド・オープン・エアー2019”の数日後、エイミー・リーとシャロン・デン・アデルの対談は電話を介して行なわれた。エイミーはツアー先であるチェコのブルノから、 一方のシャロンはオランダの自宅から。シャロンはバンドが別のツアーに出る前の数週間を自宅で過ごしていた。お互いに温かい挨拶を交わしたのち、こちらが最初にした質問は両バンドの出会いについてだ。

 シャロン・デン・アデル“ 2018年よ。10月だったかしら、エイミー?”。

 エイミー・リー“はっきり覚えてないけど、そうね。ウィズイン・テンプテーションのみんなが私たちのライヴに来てくれたの”。

 シャロン“出会えてとてもハッピーだったわ。会ったことがない相手だとどうなるかわからないものだけど、私たちはとても楽しく会話ができた”。

 エイミー“出会って5分で人生の意味について話し始めたのよね。この壮大で、美しくて、か弱い会話。少なくとも私にとってはね。私はか弱く感じたけど、あなたといると安心できたわ。たくさんの友達と付き合うよりも、1対1のほうが好き。ロックやヘヴィ・ミュージックのシーンにいる女性に出会うと、お互いにしがみついてしまうものだわ。私たちは小さなギャングみたいなもの。ときどきあなたのことや、あの会話のことを考えるの。ちょっと変に聞こえるかもしれないけど、まだ数回しか会ったことがないにもかかわらず、あなたには共感を覚えるわ”。

 シャロン“私もよ。会う前はどうなるかわからなかったけど、別れたあと、感情があふれて身体中鳥肌が立ったわ”。

 2000 年初頭、ふたりがやっているシンフォニックなゴシック・メタルはシーンの最先端ではなかった。自分たちのことをどう感じていたのだろうか?

 エイミー“私はイケてることを望んでいたわけではないわ。私のアイドルだったミュージシャンたちは皆ユニークで、ほかの人たちと違うことをやっていた。そこがレコード会社相手に最も悪戦苦闘したところよ。彼らは ユニークさをむしろ障害物と捉えるから。私たちのやりたいようにやるために、何年も戦ったわ。のけ者になるなんてクールよ!  みんな代弁者が必要だし、むしろ私たちの仲間のほうがたくさんいるように感じるわ”。

 シャロン“ブレイクを果たしたとき、私たちはまるで新人のようだったけど、実際は既に 何年ものキャリアがあった。単にヨーロッパのアンダーグラウンド・シーンを卒業しただけだった。みんな私たちをどう理解すればいいのかわからなかったのよ。すべての会場を満員にするアンダーグランドのバンドである私たちを”。

 当時の音楽業界にどんな思い出があるのだろう?

 エイミー“キャリアのごく初期、グラミー賞をふたつもらった瞬間はとても非現実的なも のだった。レッド・カーペットを歩いても、メディアの半分はインタビューに来なかった わ。私たちが誰なのか知らなかったのよ。周りにはファーギーや 50セントみたいな有名人 がたくさんいたし”。

 シャロン“まったくの別世界ね!”。

 エイミー“一切期待していなかったの。何しろノミネート相手が50セントだったから。そ したら私たちの名前が呼ばれて、思わず“Oh, shit”って。靴を履いて、慌ててステージに駆け 上った”。

 シャロン“私たちのアルバム『ザ・サイレント・フォース』が大成功して、ショウもソールド・アウトということになっても、私たちの曲はラジオでかからなかった。オランダには『ザ・ボックス・イン・ザ・ネザーランズ』というテレビ番組があって、視聴者のリクエストで ビデオを流すのだけど、そこでも私たちのビ デオは流れなかった。でも、私たちのショウに来た人たちがみんなリクエストをしてくれていて、そのうちテレビ局も無視できなくなっ たの。その番組でビデオがかかると、今度はラ ジオでナンバー2になって。そうなるとラジ オも私たちの曲をかけないわけにはいかなく なったのよ!”。

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本国『メタルハマー』328の表紙

 それまでアンダーグラウンドにいた人間が、突然スポット・ライトを浴びるというのはどんな気分なのだろう?

 シャロン“アンダーグラウンドからメインストリームに行ってブレイクするまで、とても大変だった。みんながそれぞれの意見を持っているから。大きなフェスティヴァルに出て、多くの人に見てもらえるのはいいこと だけど、私たちにピッタリだったアンダーグラウンドの心地いいフィーリングは失われてしまったわ”。

 エイミー“突然多くの批判にさらされることになった。聴こうと思っていない人の耳にも私たちの音楽が届くようになったから。批判に慣れるのは大変だったわ。私たちは自分たちのなかのもっとも弱い部分を巨大なステージで共有する。みんなが楽しんでくれるようにね。でも、お客さんはその気になれば、 トマトを投げつけることもできる”

 

“おっぱい見せろ”と 観客に言われたこともある(エイミー)

 スポットライトを浴びる生活に、困難は付き物。シャロンはメタル・シーンにおいて、女性であることを常に歓迎されているように感じてきた一方、業界特有の女性蔑視とも戦わなくてはいけなかった。最近では、オランダの雑誌『ヴェロニカ』を性差別主義であると発言。2019年1月号の表紙で、彼女に対し“メタル・ママ”という表現が使われたからだ。エイミーもやはりメディアには悩まされてきた。度重なるラインナップ・チェンジやバンド内のいざこざ、特に2003年にオリジナル・ギタリストのベン・ムーディーがバンドを去ったことを受け、彼女は“ディーヴァ”と揶揄された。とりわけ彼女たちふたりにとってフラ ストレーションとなったのが、サウンドがまったく異なるにもかかわらず、同世代の女性ヴォーカル・バンドと十把一絡げに見られてきたことだ。ふたりが直接比較されることも多かっただろう。

 シャロン“確かにエヴァネッセンスとウィズイン・テンプテーションは同じ時期に出てきたけれど、サウンドは大きく違うわ。シンセサイザーが入っていて、ときどきヘヴィでシンフォニックなのは同じだけど、彼女たちはもっとニュー・メタル寄り。私たちを見た目で比較することはできるかもしれない。どちらも髪が黒くて衣装も似ているから。でも、エヴァネッセンスはもっとアメリカっぽいし、私たちはヨーロッパっぽいわ”。

 エイミー“初めてヨーロッパをツアーしたときに、知らないバンドがたくさんいたことを覚えているわ。それらの多くはあなたたちと同じように、私たちよりもキャリアが長かった。ヨーロッパに来て、こんな質問をさんざんされた。“もちろんウィズイン・テンプテーションから影響を受けているんでしょう?”って。とてもイライラして、こう言ったことを覚えてる。“神に誓って、知らないバンドをコピーしているなんてなぜ言えるの?”って。女性がヴォーカルのバンドというだけで、 みんなそれをジャンルと見なすのよ。でも“女性ヴォーカルのバンド”というのはジャンルではないわ。女性がヴォーカルのバンドはたくさんあるけど、サウンドはみんな違う。ただのリード・シンガーの性別。本気なの? そうしてジャンルってできるものなのかしら?”。

 だが、ウィズイン・テンプテーションは2007年にラクーナ・コイル、イン・ディス・モーメントと“ザ・ホッテスト・チック・イン・メタル”(メタル界のイカした女)というツアーをやっていたが。

 シャロン“Oh god!(笑)。私には関係ないわ! 飛行機に乗るまで知らなかったのよ。メンバーのひとりが、「今回は“ザ・ホッテスト・チック・イン・メタル”ツアーだよ」って私にウィンクしたの。それで「何ですって? 誰がそんなバカみたいな名前を考えたの?」 なんて思った。

 

……この後も、二人が女性の立場からメタル・ミュージック業界に物申す! 続きは『メタルハマー・ジャパンVol.1』でどうぞ。

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