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METAL HAMMER JAPAN 編集部ブログ

トーマス・ハーケ/メシュガー 【Stay Home Interview】

各国のミュージシャンが語る<新型コロナ・ウィルス対策>の現状 

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 新型コロナ・ウィルスによる被害は、世界中のあらゆる職種に及んでいる。特に人前で娯楽を提供するエンターテインメント業界へのダメージは計り知れない。もちろん、ヘヴィメタル界も同様だ。

 今回は、6月発売予定の『メタルハマー・ジャパンVol.2』に先だって、各国/地域の新型コロナによる影響についてのコメントを紹介していきたい。第1弾は、スウェーデンに居をかまえるトーマス・ハーケ(d/メシュガー)だ。※取材は4月30日

 通訳:トミー・モーリー

 

以前は毎日スタジオに通っていたけど

今ではほぼ家での作業という感じだね。

——現在は、スウェーデンのご自宅ですか? お住まいの地域は、どのような状況でしょう?

 正直なところ、ずっとロック・ダウンという状態が続いていて、オレは家に閉じこもっている。いつも作業をしているスタジオにたまに行くことはあるけど、バンドとして集まってってことはしばらくやっていないね。みんな家で作業をしていて、リスクを最小化するように努めているよ。

——やはりそうでしたか。スウェーデンは、厳格な行動制限は設けていないというニュースも見ました。

 メディアからの情報だと、スウェーデンはほかの国とはちょっと状況が違っているみたいで、レストランや学校はある程度営業が行なわれている。しかしそれが正しい選択だったかを語るには、時期尚早という感じだね。経済活動を持続させるのももちろん大切なことだけど、人々の生活をリスクにさらしているという側面があるのもみんなわかっている。だから自分でも今がいい状況に向かっているのか、正直わからなくもあるよ。とにかくヘンな感じだね。日本も同じような状況だって聞いたけど、実のところどうなのかな?

——法律や命令で完璧なロック・ダウンが指示されているわけではないですが、政府の対応はスウェーデンより遅いといった印象です。学校はずっと休みですし、スーパーや薬局は例外として営業自粛を求められている業種も依然として非常に多いです。そういった点ではスウェーデンに学ぶべきところも多いように感じます。あなたたちの政府の対策・政策についてはどう思います?

 僕がそれについて正しく答えられるかどうかはわからないかな。世界各国でさまざまな対応がなされているけど、スウェーデンはそのなかでも真ん中寄りなアプローチを取っている気がするよ。

——なるほど。

 アメリカなんか見ると3000万から4000万人ぐらいの人たちが職を失っているわけで、彼らはどうしたらかつての生活に戻れるのか非常に不安を感じているだろう。そう考えると、経済を破綻させないためのスウェーデンの現状というのは、ひとつの策としては有効なのかもしれない。ただ国によって状況が違うから本当に判断は難しいと思う。例えばノルウェーはスウェーデンに比べて死亡者数がかなり多いし、取るべき対策や考え方は異なって然るべきだ。人命と経済のどっちが大切なのかという議論を目にするのも、なんかヘンな感じだけどさ。

——この数ヶ月で、メンバーとはどのようなコンタクトを取っているんですか?

 6週間前までは、僕とディック(ロウグレン/b)は次のアルバムのいくつかの曲に取りかかっていて、その場にイェンス(キッドマン/vo)もほぼ毎日立ち会ってくれていた。それ以降はみんな自宅で作業するということになったので、ほぼ会えてないね。僕がスタジオに行く時ときは基本的にひとりでの作業なんだ。

——ビデオ会議のような形でのミーティングはされていますか?

 その必要はないかなと思っている。曲のパートに取りかかって作業したら、そのファイルをやり取りする形で充分対応できている。各自それなりの機材を家に持っているけど、当然ながらこの方法のデメリットは作業の速度が落ちてしまうことにある。実際に作業効率は8割減という感じで、かなりやり辛さを感じざるを得ないよね。

——スタジオではドラムを叩いているのでしょうか? 具体的にどんな作業をされているのですか?

 僕は基本的にかなりの怠け者だから(笑)、ドラムは少しくらいしか叩いていないね。素材を聴いてコンピューターで少し手を加えたり、パーツを入れ換えてみたりといった作業をしていることが多いかな。すべての作業は基本的に[Cubase]で行なっていて、曲の構造をいじっているような感じさ。僕たちの作曲って試行錯誤の繰り返しで、方向性をつかむまでは本当にたくさんいじくり回している。こんな状況になる以前はほぼ毎日スタジオに通っていたけど、今では週に3日通うくらいでほぼ家での作業という感じだね。

——現状を鑑み、メシュガーひいてはスウェーデン国内のミュージシャンたちは、どのような時期から音楽活動が再開できると思いますか?

 それはすべて、治療方法の確立だったり、この状況をコントロールする見通しがいつ立つかによるよね。ライヴハウスの再開時期だったり、そもそも人が集まっていいという風潮になるのは1年後かもしれないし、ツアーの予定が組めるようになるのは、さらに先のことかもしれない。

——やはり、実際にはそうですよね。

 本音としてはそんなに長くはなってほしくないけど、その頃になってかつてと同じ状況に戻れるかどうかの保証すらない。1000人規模の会場でのイベントが許されるかもわからないし、かといって想定より早い時期に医療体制が整うかもしれない。ワクチンの開発に世の中がかなり注目しているし、それさえできてしまえば現状を大きく変えるきっかけになるだろう。音楽を含めた文化的な活動だけじゃなくて、経済活動すべてのタイム感を変えることすらできるはずだよ。

——規制が解除され始めた際には、メシュガーはどういった活動をしていくのでしょうか? 小規模や野外でのライヴ、もしくはライヴ配信といったところからスタートしますか?

 そういったもののいくつかは、ほかのバンドがすでに行なっているよね。ひとつの場所に集まらず、メンバー全員がリモートで参加してプレイなんてことも最近じゃ頻繁に目にしている。無観客ライヴの配信をやっているバンドもいるけど、オレたちはそれをやろうとは思っていない。しかしそれはあくまでも今の時点での話であって、この状況がどれくらい続くのかによって臨機応変に考えてはいきたいと思うね。ファンとつながりを持っていきたいし、僕らが今もしっかりと活動しているということを伝えていきたいと思っているんだ。詳細は今後考えていくといった感じだね。

——日本に限った話ではないと思いますが、家でドラムをプレイするのはなかなかに難しいです。そういったドラマーに、何かいいアドバイスはありますか?

 幸運にも我が家にはオレが小さいときからドラム・キットがあって、自由に叩ける環境だった。でも今は家で練習することはないし、練習パッドもなければメニューもない(笑)。でも、ドラムの名演が収録された音楽を聴くことはできて、それは非常に大切なことだよ。クイーンズ・イブ・ザ・ストーン・エイジの『ソングス・フォー・ザ・デフ』(3rd/2020年/ドラマーはデイヴ・グロール)はドラム名盤だよ。高いミュージシャンシップの結晶だね。70年代のパンクばかり聴いていても、アティチュードは身につけられてもテクニックは得られないぜ。

——バンドが今、やるべきこととは?

 多くのバンドがオンライン・リリースやマーチャンダイズに力を入れているよね。ライヴ配信をしてアピールすることも大切だろう。家で練習することもできるし……でもなによりも大切なのは、希望を失わないことさ!

◇インタビューの本篇は、6月発売予定の『メタルハマー・ジャパンVol.2』にて!