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METAL HAMMER JAPAN 編集部ブログ

ジェイムズ・ラブリエ/ドリーム・シアター 【メタルハマー・ジャパンVol.2より】

プログレッシブ・メタルの王道を突き進む
ドリーム・シアターのフロントマンは、
来るべき再訪日に向けて準備万端!

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 改めて語るまでもなく、新型コロナ・ウィルスの猛威によって世界中のエンターテインメントはストップを余儀なくされ、それはドリーム・シアターにとっても例外ではない。去る5 月に組まれていた全国6 公演にも及ぶ日本ツアーもすべてが延期となり、現在は10 月での仕切り直しを予定している。しかし、彼らがただ立ち止まり状況を傍観しているなんていうことはないはずだ。
 その実状をたずねるべく、バンドのフロントマンであるジェイムズ・ラブリエにコンタクトを取った。地元カナダにて来たる活動再開のときを待つ彼は、現在の生活状況からバンドが生み出すプログレッシブ・ミュージック、そして名盤『イメージズ・アンド・ワーズ』について、冷静かつ情熱的に語ってくれた。

Interview by Takahide “THUNDER” Okami Translation by Tommy Morly Photo by Per Old Hagen / Redferns /Getty Images

 

昔からかなり声が高くて
何の苦もなく「バラクーダ」を
歌えていたよ。

―今回は世界中が新型コロナ・ウィルスの渦中にあるなか、取材を受けていただきありがとうございます(※取材は4 月後半に実施)。ミュージシャンとしては、歌唱にしろギター・プレイにしろ、そのテクニックやコンディションをキープするということも命題になりますよね。

 僕は日々、家でヴォーカルに関する何かしらをやって、自分の喉の状態を保っているよ。 

―その際行なっているメニューとは? 

 《Doctor Vox》という練習メニューがあって(※専用の器具とそのプログラムを指す)、これはちょっとした特殊な装置に水を入れたものを使うんだよね。コードに合わせて音を取って歌ったりすると水のなかに泡ができて、声帯が適切な振動を得られるんだ。これでウォームアップを毎日20分くらい行なって、それが終わったらステージと同じような感じのパフォーマンスをテンポを落としてやっている。 

―テンポを落とすんですね。

 もちろん普通に歌ったりもするし、いろいろなアイディアを試したりと、そのとき歌いたいものにトライしているんだ。それ以外だとバランスのいい食事を摂取し、よく眠り、エクササイズをしているかな。これらすべてをしっかりとこなすことで、状態が維持できるんだと思う。実はアコースティック・アルバムをポール・ローグ(元エデンズ・カース)と一緒に作っていて。彼と一緒に作ったものはかなりクールで、いつもとは違う形で自分の声を使っている。直近だとそのアルバム用の歌入れをしているところさ。

―あなたの歌唱と言えば、あのハイ・トーンが大きな魅力ですが、あの声域はどうやったら出るようになるのでしょう(笑)? 歌い始めた頃から出るものでしたか? それとも長年の経験や鍛錬によって身につけていった? 

 ハハハ! 僕は昔からかなり声が高くて、16 歳の頃にハートの「バラクーダ」を何の苦もなく歌っていた。

―おぉ、女性ヴォーカルも!

 そう、アン・ウィルソンの声域も自由に出せていた。僕は生まれつき声が高かったけど、バンドに入ってライヴで歌うようになって、そこに太さと強さも得ることができた。シンガーは誰しも長くやっていれば喉を痛めたり、納得できないパフォーマンスをすることもあるものだ。それらを可能な限り避けるように努力を重ね、常に安定した高いレベルのパフォーマンスができるようにと努力してきた。

―やはり、大事なのは、その後の努力ということですね。

 長年歌ってきたあるとき、ジェイミー・ヴァンデラというヴォーカルの先生から“ジェイムズ、君もぜひDoctor Vox をトライしてみるといい。この効果に驚くことになるだろう。多くのプロフェッショナルなシンガーたちに薦めてきたけど、みんな自分の声の変化に驚いているよ”と、さっきのDoctor Voxのことを教わって。シンガーは誰しも、自分の実力を維持したり高めたりするために、いろいろとトライするものなんだ。今のツアーで披露していた『メトロポリス・パート2:シーンズ・フロム・ア・メモリー』(6th/1999年)や『ディスタンス・オーヴァー・タイム』(14th/2019年)の曲は高いkeyのものばかりで、自分としても万全の状態で挑めるように今も家で準備しているんだ。

『メトロポリス・パート2 ~』には
心の底から情熱を傾けていた。

―今の話にも出たように、本来であれば5月には『ディスタンス・オーヴァー・タイム』の日本公演が予定されていました。現在は10月に振り替え公演が行なわれることとなり、ファンもひと安心というところだと思います。

 もしこのCOVID-19(※新型コロナ・ウィルス感染症)に関する混乱が起きていなかったら、本来僕らは今頃君たちのエリアをツアーで周っていたところだろう。しかし僕らはみんな楽観的に捉えていて、秋頃にかけて日本を含む南太平洋エリアでのツアーが実現すると考えている。それを信じているし楽観的とはいえ、あくまでも予想に過ぎないのもわかっている。今もこのウィルスとの戦いは続いていて、世界中でワクチンや抗体の開発がハイピッチで進められている。いつどういう形で着地するかなんて誰にもわからないけど、そんな不安を抱えながらも医療機関の人たちは脇目も振らず熱心に力を注いでくれている。そういった人たちがいるのだから何か奇跡が起こると信じているし、やっぱり今年の秋のツアー再開を期待してしまうところがあるよ。 

―そのツアー《DISTANCE OVER TIME TOUR 2020 _ CELEBRATING 20 YEARS OF SCENES FROM A MEMORY》はすでに行なわれていました。これは『メトロポリス・パート2 ~』を中心に展開する内容なんですよね? 反応はいかがでしたか?

 そう、そのとおりだ! “Oh my god!”って感じで、本当にアメイジングだったよ(笑)。このアルバムは確実に僕たちのお気に入りの1枚だし、ドリーム・シアターにとってアイコン的なアルバムだ。このアルバムを発表した当時、僕らは心の底から情熱を傾けていた。それから20 年たった今でもこのアルバムを丸ごと頭から終わりまでプレイするということに、オーディエンスやファンはみんな熱狂的になってくれる。毎晩同じような興奮が待ち受けているとわかっているにもかかわらず鳥肌が立つし、何千人ものファンが細かい歌詞も間違えずに歌ってくれている。エア・ギターやエア・ドラムをプレイする人ももちろんいるし(笑)、こちらとしてもグレイトな経験だとしか言いようがないよ。

―それを聞くと、いよいよ日本公演も楽しみになりますね!

 どの国でプレイしてもライヴはアメイジングなものになるし、オーディエンスの反応も想像以上にいいものばかりなんだ。そしてアジアでも『メトロポリス・パート2 ~』の再演は絶対にやりたいという想いがあるからこそ、“ツアーが再開しないわけないだろ”という風に楽観的に捉えているところもあるんだ。そっちにいるファンにぜひ届けたいと思っているからね。まだその志の半ば、ツアーの最初の段階で中断を余儀なくされたけれど、手応えは充分さ。

―全世界で、同様のプログラムになるんですか?

 もちろんだよ! まったく同じセットで挑むことになる。ここまでのショウを、熱量もそのままに持っていきたいと思っているさ。そうじゃなければファンに対してフェアじゃないし、もしそれをやらなかったら、日本のファンだけじゃなく誰しもが激怒するだろうから(笑)。

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そもそも『イメージズ・アンド・ワーズ』ができたのも、
互いの実力がわかったなかで作っていたから。
ージェイムズ・ラブリエ

 

◎続きは【メタルハマー・ジャパンVol.2】でどうぞ。