METAL HAMMER JAPAN

METAL HAMMER JAPAN 編集部ブログ

ダニ・ウィンター・ベイツ/ベリー・トゥモロー

各国のミュージシャンが語る<新型コロナ・ウィルス対策>の現状

f:id:metalhammer:20200904190024j:plain
メタル・ミュージシャンに世界のコロナ事情を聴くインタビュー、その第8弾は、英メタルコアの最前線を走るベリー・トゥモローのダニ・ウィンター・ベイツが話を聞かせてくれた。去る8月に最新作『カニバル』をリリースしたベリー・トゥモローだったが、本作ももともとは4月発売を想定していたという。9月16日発売の『METAL HAMMER JAPAN Vol.3』ではダニがそんな同作について語ってくれているので、そちらもぜひチェック。

通訳:トミー・モーリー

※インタビューの本篇は、9月16日発売の『メタルハマー・ジャパンVol.3』にて

 

そもそも、バンドをやっている人間が人間らしい生活を保つことが難しいんだ。

—(取材時の)8月時点で、イギリスの具合はどうでしょうか?
俺はイングランドのサウサンプトンに住んでいるんだ。現在世界中どこでもそうだと思うけど、クレイジーな状況だよね。こっちもひどい状況だと言われている国とさほど変わらないし、実際1平方マイルあたりの感染者数や死者数という数字の上でも、俺らはトップ・レベルの国だ。住む場所としては最悪と言えるだろう。
—それは今も変わらずという感じなんですね。
ただ、この状況はどこに行っても変わらないだろうし、目に見えない野獣がそこらへんをうろついているようなもんだ。感染した人は治療や封じ込めを目的に病院へ行くけど、不運なことにそこがまた感染源となってしまうことだってある。もはや非現実的な世界が繰り広げられているようなものさ。
—当然、バンド活動に力を入れられる状況ではないでしょう。
個人として生活するだけじゃなく、バンドとして活動していくうえでも最悪の状態だよ。ライヴなんてできるわけもないし、その兆しさえも見えない。そもそも、バンドをやっている人間が人間らしい生活を保つことが難しいんだ。だけど、悲観に暮れるだけではなく、来年に向けて延期された日程をアナウンスするバンドだって出始めている。今俺たちができることも、来年の活動について考えることだ。特に多くの国が第二波を迎えているわけだし、俺らも巻き込まれないよう注意しなければならない。ツアーに出られたとしても、結局すぐにキャンセルになってしまうなんてことは避けたいところだから。
—プロ規模の音楽活動の場合、どのように進めていくべきだと考えますか?
やっぱり、それはバンドの規模によるよね。例えばスリップノットみたいなスタジアム・クラスのバンドだったら、広い会場でソーシャル・ディスタンスを保ちながらのライヴもできなくはないだろう。それでもかつてと同じようにというわけにはいかないよね。ただ、それが俺らみたいに800~1000人クラスの会場で活動するバンドにはとても難しいことだ。だってそれじゃ収益を上げることがそもそも困難だしさ。もし“観客は100人しかいないけど、ライヴをやってくれないか?”と言われたら喜んでやるだろう。そんな規模でのライヴのオファーをする人がいてくれればの話だが、それは現実的じゃないよね(笑)。でも俺らみたいなメタル・バンドは、常にライヴにこだわってきた。現実的には事態が収束したら小規模な会場でのライヴから始めるのが前向きなやり方だろう。
—やはり、そうなりますか。
多くの国で、そういう風に小さな会場から再開していくのかもしれない。しかし本当にそうなるのかは誰にもまだわからないよ。コロナ・ウィルスの感染が拡大している現状では、誰もがこの状況にどう対処すべきか模索している状況なんだよ。
—英国でのミュージシャンへの保証というと?
音楽産業に従事している俺たちには、本当にわずかばかりの額が支払われているといった状況だ。音楽産業は最も支払われていない産業だと思うね。クルーたちはデモを起こしたりしていて、俺らのバンド・メンバーなんて、ビタ一文払われてすらいない。この国でミュージシャンが生きていくのは本当に難しいんだ。政府からは音楽産業を支える姿勢はまったく見えないよ。 

物事には順序があり、それを急いだあまりまた振り出しに戻ってしまう。

—配信ライヴやトーク系など、通常のライヴではない形での活動にも力を入れているバンドも出てきています。あなたたちの場合はどうでしょう?
ポップ系のアーティストだとそういうのは多くて、メタル・バンドでも配信しているヤツらを目にするよ。ただそれが俺らの場合、うまくやれるとは思っていない。正直なところ、俺らは無観客のスタジオでライヴをするタイプじゃないし、やるにしても前向きな気持ちにはなれないかな。
—確かに。
仮にそんな形でライヴをやったところで、人々は納得するのか? 俺らのライヴはやっぱり生で見たいと思っているだろうし、それは俺らに限らずどんなバンドであってもそうだろう。クレイジーになってサーフするって光景が当たり前だからね。配信にしたからってそのフィーリングを代替できるわけじゃないだろう? ただスタッフの生活を支えるという意味では反対はしないし、ファンとつながりを保つという意味でもクールだと思う。俺らはファンを交えたZoomのセッションをしたし、ファンと視覚的につながるっていう交流はやっぱりある程度は必要なんだろうね。
—健康は当然大切ですが、そもそも生活していくことも大切で、そのバランスは非常に難しくもありますよね。あなた個人として、今後はどのような生活スタイルを送るべきだと考えますか?
各自が分別を持って生活していくことが何よりも大切だと思う。病院や保健所といったヘルスケアに関する施設が発するメッセージに従って行動し、自分勝手な判断で動くのは慎むべきだね。こういった状況が長期化するとそういったメッセージを軽視したり、誰かから命令されることを嫌がり自暴自棄に行動する人も出てくるだろう。けれどもやっぱりこういうことって重要性を認めなくちゃいけないよ。ただ、政府が言うことを聞かなくちゃいけないかというと、多分それはないだろうけどさ(笑)。
—日本と同じ……かな(笑)。
ハハハ。もちろんグレイトな働きぶりをしてくれている人も何人かはいるんだろうけど、組織として考えれば一度だって納得の働きぶりをしたことなんてないだろう? ただイギリス国内だけの話になるかもしれないけど、科学的根拠に基づいて各自の判断をすべきだと思うんだ。今回のコロナ・ウィルスの件について国民はスゴい勢いで学ばざるを得ない状況にいて、ウィルスそのものについてはもちろんのこと、それによる影響も理解しようとしている。ワクチンに対する期待も強いけど、必ずしもそれ頼みになるだけじゃなくて、どうやったら自分たちを守れるのかも知識として身につけておかなければならない。
—そのとおりだと思います。
もちろんこれは簡単なことじゃないのもわかってるし、この生活に嫌気が差して人と会いたくなる気持ちも当然わかる。みんなもライヴに行きたいだろう。しかし物事には順序があり、それを急いだあまりまた振り出しに戻ってしまうこともある。ロック・ダウンから出直せば、ライヴはまた遠ざかってしまうわけで、時間をかけること嫌がっていては何もできないよ。その代わり昔の生活が戻ってきたら、それを楽しんでやろうという気持ちを強く持っていれば、少しは前向きになれると思うんだ!

※インタビューの本篇は、9月16日発売の『メタルハマー・ジャパンVol.3』にて

 
最新6thアルバム発売中!

f:id:metalhammer:20200904192053j:plain

『カニバル』
ソニー/SICP-6339

Amazon.co.jp: カニバル: 音楽

 

各国のミュージシャンが語る<新型コロナ・ウィルス対策>の現状シリーズ

www.metalhammer.jp

www.metalhammer.jp