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METAL HAMMER JAPAN 編集部ブログ

ブルース・ディッキンソン/アイアン・メイデン【『METAL HAMMER JAPAN』Vol.7より】

“荒武者フロントマン”ブルースが語る、新作『戦術』制作の裏側

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 前作『魂の書〜ザ・ブック・オブ・ソウルズ〜』から6年、ヘヴィメタルの象徴たるアイアン・メイデンが、17枚目となる新作『戦術』をリリースした。原題も“SENJUTSU”であり、侍と化したエディを見るにあたり、“日本”が色濃く表われた一枚であることは一目瞭然だ。
 ただ、実は当パンデミック以前に作られた作品であり、今回特別インタビューに応じてくれたブルース・ディッキンソン、ヤニック・ガーズによれば“バンドをあまりにも理性的な状態から追いやってしまったため、お披露目に至るまで2年のときを費やした”という……!? プロデューサーのケヴィン・シャーリー、イラストレーターのマーク・ウィルキンソンの言葉も加え、この10曲・82分に及ぶアルバムにどのような背景があるのか迫ってみたい。 
 メタル・シーンの光明となるであろう待望の新作を手に、アイアン・メイデンはどのような戦術で、暗雲に覆われたエンターテインメント・シーンを斬り開いていくのだろうか!?

Text by Dom Lawson
Translation by Tommy Morly

 

ニコがやってきて“クソッ、なんで俺らはアルバムを作るんだ!?”と言っていてさ。
>ブルース・ディッキンソン

 昨今の18ヵ月間は、多くのミュージシャンにとって、相次ぐスケジュールのキャンセルによる悪夢の日々だったに違いない。しかしブルース・ディッキンソンはどうだっただろう。17枚目のスタジオ・アルバムをリリースするとの情報を受け、本誌がメイデンのシンガーを直撃した際、彼の眼には絶えることのない炎が燃え盛っていた。

 彼の普段着として定着してきた競技自転車用ウェア一式(黒一色のベストとパンツ)を身にまとったブルースは、にこやかな笑顔とほとばしる情熱とともに我々を迎えてくれた。しかし、この最強のアルバム『戦術』について我々が質問を投げかけると、ブルースの口調には明らかに熱が入り、再び世界を巡る日を心待ちにしている様子がひしひしと伝わってくる。

 我々が最後に彼と接触したのは2015年の『魂の書〜ザ・ブック・オブ・ソウルズ〜』リリース前夜のことで、当時は咽頭がんとの闘病による離脱を経て、落ち着いた様子を見せていた。そのときとは対照的に、今のブルースは次のステップについてあからさまに興奮している。我々にアルバムの全容をチラりと公開することが許可されたことに、彼は喜びの表情を見せてくれた。

 ブルースは机に前のめりになり、満面の笑みで“グッドなアルバムだろう?”とひと言。答えはもちろん……ファッキン・グレイト!……だ。

 

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 この未曽有の事態によって、驚いたことに英国が誇るバンドの17枚目のスタジオ・アルバムは、ひっそりと地下室の金庫のなかで2 年近く保管され、エディとその同胞たちによって守られてきた。

 パリの[ウィリアム・テル・スタジオ]にて、長年のコラボレーターであるケヴィン・シャーリーを迎えて再びレコーディングが行なわれた本プロジェクト。《レガシー・オブ・ザ・ビースト》と銘打たれたメイデンのツアー前半戦の直後、そのライヴ活動の休止期間に『戦術』は完成していたのだ。

 “もともとの計画だと《レガシー・オブ・ザ・ビースト》の後半戦が終わった頃にアルバムを出すことになっていたんだけど、それは一旦延期となり、さらに再延期となっていったんだよ”とブルースは顔をゆがめる。
 “だから俺らは本当ならアルバムを作り終えた状態で、ツアーに出ていたはずだったんだ! ニコなんてスタジオにやってきて、作業を始める前にイラついた表情で「一体なんで俺らはアルバムを作るんだ!? クソッ! 俺は休暇を過ごすはずだったんだからな!」とかって感じだった。笑えるだろ? だから「まぁ、とにかく今やっとくに越したことはない」って感じで、とにかくやり切ったんだ。ツアーが終わったら、すぐさま世界中がクソみたいな状態になっちまったから、ある意味ラッキーではあったね”

 アイアン・メイデンはパンデミック直前、2019 年10 月15 日にチリのサンチアゴにて最後となるライヴを行なった。世界中でさまざまなイベントがキャンセルされていくに連れて、《レガシー・オブ・ザ・ビースト》ツアーの完走は不可能なことだと明らかになっていく。多くの人が想定した以上に、この状況は長期化していくことになる。

 当時のことをブルースは次のように話す。“俺は最初、パリでロックダウンを経験することになってね。3 月の日差しが心地よかったあの日、俺はパリでバルコニーに座っていたんだ。いや、むしろ季節はずれの熱波がやってきて、かなり暑かったくらいだったな。ロッド(スモールウッド/アイアン・メイデンのベテラン・マネージャー)に「俺らもマスクを着用しなくては!」と言ったら、「いや、俺らは絶対にそんなもの着けないぞ! こんなのはすぐにいらなくなるさ!」なんて言っていたんだけど(笑)”

 世界各地で混沌とした状態が勃発していた一方で、アイアン・メイデンは新たなスタジオ・アルバムを完成させたが、彼らはそのことを完璧にシークレットにしなければならなかった。そして実際にそうされたが、彼ら自身からも隠すこととなった。

 “レコーディングの終盤ともなるとみんな家に帰っていたんで、基本的にスタジオには俺、スティーヴ(ハリス)、ケヴィンが残っていて”と、ブルースが回想する。
 “何度か聴き返し「よし、これはイイね!」という感じだっけど、俺はそれから2 年くらいそいつを聴くことはなくて。俺らみんながだよ! バンドの誰もコピーを持っていなかったんだ! 特にスティーヴなんて誰かが不意にインターネットでリークしてしまうんじゃないかと神経質になっていて、いろいろと理由をつけて鍵をかけた金庫に保管していたくらいだから。
 俺が再び聴くことになったのはメキシコでのライヴの素材(2020 年のライヴ・アルバム『ナイツ・オブ・ザ・デッド、レガシー・オブ・ザ・ビースト:ライヴ・イン・メキシコシティ』)のミキシングを行なっていたときだ。スティーヴに寄っていって「お前は次のアルバムの音源のコピーなんて持ってないよな?」って聞いたら、「俺のパソコンのなかに入っていると思うな!」という感じで。しかもアイツはほんの数回程度しか再生していなくて、俺と同様何年も聴いちゃいなかった。「なんだよ! デカいスピーカーで聴こうぜ!」となり、そこで俺はやっと「なんてこった、けっこうグッドじゃないか!」と堪能したんだ”

 

 

 

◎続きは【メタルハマー・ジャパン Vol.7】  でどうぞ

METAL HAMMER JAPAN Vol.7

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『戦術』
ワーナー/WPCR-18449/50

 

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