ユーロニモスはクソ野郎だったね。
彼ほど壮絶な事件を間近で見てきたミュージシャンはいないかもしれない。
ノルウェーの伝説的ブラック・メタル・バンド、メイヘムの創設メンバーであるヨルン“ネクロブッチャー”ストゥッベルドは、エクストリーム・メタルに人生を捧げている。この53歳のベーシストは1984年のバンド結成以来、90年代初頭の3年を除いてバンドの舵取りをしてきた。ペル“デッド”オーリン(元vo)とオイスタイン“ユーロニモス”オーセト(g)の死という劇的な出来事、そして長年に渡る数々の論争を乗り越えてきた彼が、その人生から学んだことの一端を我々に示してくれる。
Text by Dave Everley
Interpretation by Mirai Kawashima
俺は早く成長しなくてはならなかった。
俺は“子供の頃にこんなトラウマがあって”なんていうタイプじゃないが、いくつかの出来事のせいで必要以上に早く成長し、自分の生活に少々の責任を持たなくちゃならなかった。父親がいなかった俺は、ワルいヤツらの仲間になっていたんだな。
つまり、乱暴者や犯罪者たち、不法侵入したり車を盗んだり、アンフェタミンをやってるようなワルい連中のなかで育ったのさ。ただ、こういう輩に囲まれているときは、賢く立ち回らないとこっちが殺されちまう。だから俺はあっという間に世渡りがうまくなったんだな。
他人に自分自身の歴史を書き換えさせるな。
俺がメイヘムを辞めたと言うヤツがいるが、それは間違いだ。俺がバンドを始めて、ロゴを描き、オイスタイン(ユーロニモス)を引き入れたのさ。ヤツはクソ野郎だった。友達の死体(シンガーのデッド/1991年に自殺)の写真を撮りやがったから、“俺に電話をする前に、そ の写真を全部焼け”と言ったんだ。
だがヤツはそうしなかった。どうしたと思う? 何とあの殺人鬼(ヴァーグ・ ヴィカネス/カウント・グリシュナック) に電話をかけて、俺の後釜にしやがったんだ。そのことはみんな知ってるだろう。 俺がメイヘムを辞めたって? 俺はメイヘムを辞めたことなんてない。本当にこの誤解にはウンザリだ。
長持ちする豚の頭もある。
1985年、ギグ用に豚の頭を4つほど注文したんだ。だけど、ギグがキャンセルになってしまってね。だからその豚の首を、祖母の冷蔵庫に1年ほど入れておいたのさ。
取り出して写真撮影もしていて、そのなかの一枚は「Ancient Skin」(1997年) というシングルで使ったな。当時豚の頭は、ショックを与えようと思って使っていたもので、動物虐待とは無関係だ。すでに死んでいた豚だからね。
今はもう豚の頭は注文していない。頼んでもいないのに、プロモーターが用意してくれることもあるけどな。彼らはライダー(※ライヴをやる際にバンドがプロモーターに要求する食べ物、飲み物、タオルなどのリスト)を見て、“豚の頭が載ってないぞ?”なんて思うんだろう。
メイヘムが導き、ほかのバンドが追従する。
俺たちが豚の首を使ったら、多くのバンドがそれをマネし始めたんだ。ゴルゴロスが羊の頭を100個ステージに並べたのも見たね。
それに俺たちもかつてはパイロやたいまつを使っていたけど、ラムシュタインが出てきてすべてをぶっ飛ばしたよ。それ以降 “爆弾一発爆発させるごとに、500ポンド燃やしているようなものだ”と思うようになったから。
メイヘムはメタル界のローリング・ ストーンズ。
俺はミック・ジャガーやローリング・ストーンズと同じ戦略を持っていることがわかったんだ。
彼らは“その国にやって来る最初の西洋のバンド”になることの重要性を理解していたのさ。そういう国に行けば、神様になれる。実際はその国にいる人たちのほうが優れていたとしてもな。
だから俺も、あらゆる国で“そこに最初にやって来たメタル・バンド”になりたいんだ。ラオス、ベトナム、フィリピン、パキスタンでプレイしたいね。アフガニスタンはって? それはどうかな。ヤツらは冒涜の罪でメタル・バンドを10年間服役させたからな。アフガニスタンの刑務所に入るリスクを冒す覚悟はできていないよ。
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