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METAL HAMMER JAPAN 編集部ブログ

【最新作インタビュー】オジー・オズボーン【『METAL HAMMER JAPAN Vol.11』より】

ヘヴィメタルの帝王は不死身なり!
キャリア最大のゲストを招いた最新作

 やはり、オジー・オズボーンは不死身なのか……パーキンソン病を起因とする痛みを押して作り上げた前作『オーディナリー・マン』でさえ、“ラスト・アルバムになるのでは”とも囁かれていた。それから2年半、新型コロナ・ウィルスへの感染、首部の手術の執行など満身創痍とも言える状態でありながら、果たして13枚目となるスタジオ・アルバム『ペイシェント・ナンバー9』を完成させたオジー。ヘヴィメタルの帝王は、まさに不屈の男なのである。
 しかも本作は、前作を優に超えるロックが詰まっている。ブラック・サバスでのトニー・アイオミを皮切りに、名ギタリスト、名ミュージシャンとともに歩んできた音楽人生だが、今回はそんなトニーを筆頭に、ザック・ワイルド、ロバート・トゥルヒーヨといった盟友から、同郷のギター・レジェンドであるジェフ・ベック&エリック・クラプトンなど、その強力な参加者は枚挙にいとまがない。
 そんなトップ・ミュージシャンがそろった『ペイシェント・ナンバー9』は、ヘヴィなサウンドとメロディとが相まった非常にオジーらしい作品であり、反面、ヘヴィメタルだけにとどまらない万能なロック・アルバムとなったのである。これはオジーの、果てることのない音楽への想像力と情熱の表われと言えるものだろう。
 あと数ヶ月で74歳となる御大は、今日も過酷なリハビリを続けている。ひとえに、再びステージに上がるためだ。それと同時に、自らの行く末……さらには死へについても考えている。本単独ロング・インタビューでは、そんな心の内を何も隠すことなく語ってくれた。ヘヴィメタルが生まれて50余年、そのゴッドファーザーたるオジーは今、どのようなステージに立っているのか。

Interpretation by Tommy Morly

 

Part.1
俺はギグをプレイするんだ。
〜カムバックに向けて。

—早速ですが、最近の調子はどうですか?
 今は毎日一時間くらい、トレーナーと一緒にエクササイズをしているよ。けっこうゆっくりしたペースでのリカバリーなんだ。わかるか? 自分の容態がまだ良くないってのは、ファックなんだよ。最初に俺の手術をしたヤツってのがかなりしくじって悪化させてくれたようで、結局再手術を受けるハメになってしまった。一発目の時は3ヵ月くらいずっと病院にいるハメになったんだからさ。最近になって2回の手術を受けたんだけど、最初に手術を受けた時点よりも悪化していて……手術によるダメージを治療するためのものだったんだ。ひと晩も病院にいたんだから。
—それは6月に受けた手術ということですね?
 本当に悲惨な男だろ? 俺はこういうことに向いていないんだ。こんなにもお手上げな状況になったことなんて、今までになかったからね。コロナに関する一連のことが起こったとき、誰も仕事なんてしていられなかった。だから誰も動いていないうちに、アルバムを作ってやるんだと思っていたんだ。そして俺はこうやって今でもカムバックしようとしている。こうやってトレーナーと1時間向き合っているけど、以前は毎日10時間も費やしていたし。もうやっていられないよ。もう俺は死にそうだよ……。
—それでもあなたが“もういいや、充分やったよ”なんて言っている姿は想像がつきません。
 トレーナーは“一度この丘を登ってごらん”と言うんだ。一度だと!? 俺なら一週間後には走って登ってやると奮起するんだ。もしつまずくようなことがあったとしても、弱音なんて吐かない。俺はカムバックしてギグをプレイしたいんだから。
—最後にライヴをプレイしたのは、2019年でしたでしょうか?
 もう4年近く前になるんだ。2020年……いや、2019年に向けた大晦日のカウントダウン・ライヴだったね。2019年の始まりは信じられなかくらいキツかったな。俺はシャロンに“もう治らない、もういいや”と言ったんだ。今でも俺の体はグチャグチャだけど、いくらかマシにはなっている。俺は2003年にパーキンソン病と診断されたが、それは毎日薬を飲んでおけばすぐに収まる大したものじゃなかった。ジューダス・プリーストのグレン・ティプトンはかわいそうに、かなり深刻な状況のようだけど。彼のことはだいぶ昔から知っていて、“俺らは連絡を取り合うべきだ”と伝えたんだが、一度話をしたきりで、その後彼とは連絡が取れないんだ。ただ、最近彼は容態がさらに悪化してきたとも聞いているんで心配だよ。
—本当にそうですね。ただ、あなたのその症状に関しては、比較的軽度でもあるんですよね。
 ラッキーなことに、俺のパーキンソン病を担当している医者からは“私は多くのパーキンソン病患者を見てきましたが、実はですね、あなたの病状はそのなかでもファッキンなくらいに軽いケースです”って言われたんだ。俺はかなり舞い上がってしまったよ!
—夜遅くまでパーティをしてきたのに(笑)!
 今さらそれに文句はつけられないな(笑)。俺はもう50年近くロウソクを両端から燃やすようなことをやってきた。2020年にもUFOのメンバーがふたり亡くなったよな。ピート・ウェイはおもしろい男で、何度か一緒に遊びに行ったものだよ。
—最近は昔の仲間と会ったりはしますか? 今はコロナによる行動規制も解除されましたし、ニュー・アルバムではさまざまなプレイヤーをゲストに招えています。多くの人たちに会えるような環境になってきているのではないでしょうか?
 正直なところを言うと、全部電話でのやり取りなんだ。俺は出かけないし、そもそも苛立ちを感じざるを得ないことでもあるんだが、そこら辺を歩き周ることすらできないんだから。
—その点については、やはりあまり状況が良くないんですね。
 別の問題もある。もし転んだり擦り傷でも作ろうものなら、俺の血は薄くなってきていて、屠殺したブタみたいに血を流し続けてしまうらしい。誰かに出会っても“転ばないでくださいね!”、“もちろんだ”、“あぁ、良かった”みたいなやり取りをずっとしているから、“じゃあ、もし転んだらどうなってしまうんだ!?”って神経が磨り減ってしまうよ。
—精神的な疲労にもなっているという。
 とにかく転ばないようにするしかない。次第に“もう、転ぶかどうかなんてどうでもいい! 転んだからどうだっていうんだ、このクソめ!”となっていくんだ。俺の頭のなかでは“もうしょうがないだろう、自分はガンなんだ”くらいに思っているさ。世界中で最悪なことを受け入れざるを得ないが、俺はファイターなんだ。俺はこれを戦い抜くぜ。もしこうやってアルバムを作っていなかったら、狂ってしまうところだったはずだよ。4年間も家でボーっとしてなくちゃならないなんて、そんなこと俺は人生で起きたことがないんだから!

 

Part.2
プレッシャーを取り除く手段。
〜アルバムを作る意義。

—さて、注目の最新アルバム『ペイシェント・ナンバー9』の制作は、どのように進みましたか?
 俺が音楽を作るとき、自分のことなんて考えちゃいない。そんなことをしたら、頭が割れてしまいそうだよ。俺の頭は腐っていて、ロクなことを教えてくれやしないから(笑)。でもスタジオに戻れたのはグレイトなことだったよ。ジェフ・ベック、トニー・アイオミ、エリック・クラプトン、パール・ジャムのマイク・マクレディ、ロブ(ロバート)トゥルヒーヨ、ガンズ・アンド・ローゼズのダフ(マッケイガン)がプレイしてくれていて……亡くなってしまったテイラー・ホーキンスもいたな。アイツは本当にナイスガイだったさ。そしてチャド・スミスにザック(ワイルド)もね。
—眩いばかりのミュージシャンたちを集めた、本当に素晴らしいアルバムとなりましたね。
 アルバムを聴いてくれたのか?
—もちろんです! 全曲聴いて、とても気に入りました。前作はとてもエモーショナルで美しいアルバムでしたが、新作はワイルドなエネルギーがあって、一曲目からグッと心を鷲づかみされました。あなた自身の率直な感想は?
 俺はずっと外に出ていないから、まだまわりのヤツらからのフィードバックを一切もらっていないんだ! いつもみたいにロードに出ていれば、ほかのバンドの連中が俺のところにやってきて、“どこが気に入った”とか“そうじゃなかった”とか伝えてくれるんだが、そういうことがないからさ。このアルバムは、自分に降りかかるプレッシャーを取り除く手段として作ったようなところがある。
—ヴォーカルのレコーディングも順調に?
 最近じゃ、レコーディング・スタジオに行くことがあまりないんだ。プロデューサー(アンドリュー・ワット)の家に行き、彼がそれなりの機材を準備して待っている。そうしたら俺は“オーケイ……”って感じで、作業はかなり早くてシンプルなんだ。
—なるほど。
 彼は若いキッズのレコーディングをする際には、声をかなりイジって作り込まなくちゃならないこともある。誰だったかまでは覚えちゃいないが、若い娘で“今のはまぁ良かったけど、そこまで良かったわけじゃないわ”と言っていて……それで彼はそこから声をイジっていったんだ! だけど俺はProToolsをテープのようにしか使っていない。トリックを使ってイジるようなことはしたくないんだ。そんなことをやっていたら、簡単にトラップに陥ってしまうからな。本物を作るための作業じゃないんだったら、それはクソみたいなことだ。一曲を通してずっと同じ調子なんて、頭痛でしかないよ。
—本当にそのとおりですね。前作でもプロデュースを担当したアンドリュー・ワットですが、そもそもはどのようにして出会ったんですか?
 家で“俺はもうやり切った。あのステージが最後のギグになったかな……”なんて考え始めていたら、ある日ケリー(オズボーン)がやってきて、俺にこう言ったんだ。“パパ、レコードを作りたくない?”とね。俺は“どういうことだ?”と思ったけど、そこでケリーがこのアンドリュー・ワットという男について教えてくれた。ただ、俺はコイツについて聞いたこともなくって、“彼はけっこうなヤリ手よ”なんて言われたけど、“それはグレイトだ。だが俺はコイツのことなんて聞いたこともないぞ”という感じだったね。
—なるほど。
 こうして俺はこの男と会い、意気投合したんだ。かなりいい感じだったけど、初めてやったアルバム『オーディナリー・マン』は、なんだか自分でもアルバムを作ったという気分にはならなかったな。俺が言いたいのはまさにそういうことで、ProToolsでイジりながら作ったヤツってのは、俺には手応えがまったく感じられないんだな。あまりにも多くの人たちを発狂させてしまったし、俺もスタジオから出て3ヵ月くらい精神療養の施設に入る必要があったから。俺はアンドリューを発狂させたよ! “こんなのまったくもってダメだ!”、“じゃあどうしたいんだ?”、“とにかく直せ! ミックスし直せ!”って感じでね。それでザックがやってきて、助け船を出してくれたのさ。彼は俺のためにいくつか音を加えていってくれたんだ。
—『オーディナリー・マン』をリリースしてから、どのくらいで“よし、またスタジオに戻ろう”という考えになったんでしょう?
 アンドリューに“もう1枚アルバムをやるか?”って言ったら、彼はただ“もちろん”と答えてくれた。2年前に取りかかり、あれやこれやといろいろな議論をしたよ。でも俺にとってはしっかりとした作品を作るために、それらはやらなきゃならないことだった。“お前が次のアーティストとの仕事にいきたければそうしろ。でもこれがコケたら、人々に「オジーは終わりだ」って言われるだろう”って感じで、俺はアイツを口説いたんだ。正しいかどうかっていうのは自分の魂や腹のなかから聴こえてくるもので、それは今までもずっとそうだったからね。

 

◎続きは『METAL HAMMER JAPAN Vol.11』  でどうぞ

 

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