以前の“エスキモー・コールボーイ”から改名し、
エレクトリック・コールボーイがさらなる進化を遂げようとしている。
アリーナ級の会場をソールドアウトさせることやフェスのヘッドライナーとして出演すること、さらに楽曲がYouTube上で2600万回再生を記録することなど、エレクトリック・コールボーイになる前の彼らは想像もしていなかったことだろう。
2020年初頭、シンガーとの関係やクリエイティビティは崩壊寸前となっていたが、メンバー・チェンジを機にリリースした「ハイパ・ハイパ」が好評を博し、彼らの人気は一気に高まる。さらに今年3月には以前の“エスキモー・コールボーイ”から改名し、さらなる進化を遂げようとしている。
このポップとラウドを自在に操るファニーなバンドのヴォーカリストであるニコ・サラックとケヴィン・ラタクザックが、これまでの経緯を話してくれた。
Interpretation by Tommy Morly
俺らはとにかく楽しくて誰もが笑顔になってしまうような曲を作りたいんだ。
>ニコ・サラック
ピンクと緑のネオン・サインのもと、8000人ものファンが彼らの母国ドイツはオーバーハウゼンの[ルドルフ・ウェバー・アリーナ]に集った。数時間後には派手なファーをあしらったコスプレのような衣装に包まれたエレクトリック・コールボーイがステージに登り、オーディエンスのピットを大いに沸かせることになるはずだ。
アドレナリンを猛烈にチャージするアンセム「ハイパ・ハイパ」を2020年にリリースして以降、エレクトリック・コールボーイをめぐる環境はこの日のライヴと同様に、常にカオス化してきた。EDMとブルータルなメタルコアを融合させ、強烈なインパクトを与えると同時に、メンバーが間抜けなマレットや髭を振り乱すビデオがバズり、本曲は一大センセーションとなってYouTube上で2600万回再生を記録していった。
続けざまにシングル「ウィー・ゴット・ザ・ムーズス」と「パンプ・イット」がリリースされ、特に後者で彼らは本年度[ユーロビジョン・コンテスト]のドイツ大会にエントリーをしたが、残念ながら敗退となった。彼らを破り選出されたドイツ代表が本選で無得点に終わったことから、ドイツの審査員たちは今頃その判断を相当悔やんでいることだろう。
ほんの数ヵ月前までは小さな会場でプレイしていたバンドがアリーナをソールドアウトさせている現状は、エレクトリック・コールボーイの勢いの凄まじさを物語っている。来年にはイギリスは[ブリクストン・アカデミー]での単独公演が予定されているが、どうしてこのようなことが実現したのだろうか?
バンドの突然のブレイクについて、ニコ・サラック(vo)は次のように説明する。
“俺らは素晴らしいタイミングで「ハイパ・ハイパ」をリリースしたんじゃないかな。パンデミックのせいでほぼすべての人がムシャクシャしていたと思う。多くのバンドがディープでメランコリックなものを作っていた一方で、俺らはとにかく楽しくて誰もが笑顔になってしまうような曲を作りたいと、それだけを願っていた。「ハイパ・ハイパ」のビデオの最初のシーンで俺らが小さくジャンプして振り返るところは、まったく計画していなかったことなんだ。偶然その場で思い浮かんだものだったんだよ”。
“どんなビデオにするべきかを曲が自然と導いてくれたんだ。「ヤシの木が必要だ! クールな照明が必要だ! フェラーリも! イケイケなギャルも必要だ!」って感じだったね”とつけ加えるのは、ともにヴォーカルをとるケヴィン・ラタクザック(vo、k)だ。
ケヴィンがバンドの人気の急上昇を肌で感じたのは、2020年にオランダでの休暇中にビデオの再生数が異次元の速さで増えていったことに気づいたときだった。それ以来、そのスピード感についていくのがやっとのことだったという。“俺らがこの状況を当たり前のように捉えていると指摘する人たちがいるけど、まったくもってそんなことはないんだぜ!”と続ける。
その一方で6枚目のアルバム『テックノ』のリリースを9月に控え、8月には《エスカレーション・フェスティバル》と銘打ったさまざまなジャンルを横断するフェスを主催。その勢いは留まることを知らず、バンドは来年の活動をさらに充実したものにすることに照準を合わせている。
◎続きは『METAL HAMMER JAPAN Vol.12』 でどうぞ