METAL HAMMER JAPAN

METAL HAMMER JAPAN 編集部ブログ

《最新作インタビュー》コリィ・テイラー/スリップノット【『METAL HAMMER JAPAN Vol.12』より】

これはスリップノットだが、
我々の知っているスリップノットではない。

 巷では、スリップノットの最新作『ジ・エンド・ソー・ファー』は、この20年で最も“驚くべき”アルバムだ――と言われている。彼らでしか生み得ない混沌としたサウンドを持ちつつも、これまでには聴けなかった耽美なトラックがあるなど、非常に実験的な側面も感じられる。そんな本作を、フロントマンのコリィ・テイラーはどのように捉えているのか? これまでになく心の平穏を得ている彼であるが、そのような心理状態でスリップノットが持つ濁々とした感情を吐き出すことはできるのか。どうやら現代メタルの絶対的王者は、ニュー・チャプターに突入したようだ。

Interpretation by Mirai kawashima

 

スリップノットだからクソ難しいけど、イカしているよ。

 々はZOOMでコリィ・テイラーとつながるのを待ち、画面のフリーズから抜け出すと、そこには恐ろしいオフ・ホワイトのカーテンと壁、そして安っぽい木製の机がある独房のような部屋とともにシンガーが現われた……実際はホテルの一室なのだが。黒のジーンズと黒いノースリーブのシャツで、ボールペンを回しながら満面の笑みを湛えている。
 “俺と同じ街に住んでいる君と話をするために、ポーランドまで来ちゃったよ!”と彼はジョークを言う。スリップノットはツアー中で、彼がこの13年間ホームと呼んできた場所……ラスベガスに私がいることを知っているのだ。ただ、彼はその他の多くを恋しがっているわけではない。ラスベガス・ストリップを川に変えてしまうほどの、聖書に出てくるような激しい雷雨、鉄砲水以外は。
 “あぁ、アレはなくちゃならないからね!”と、彼はうなずく。
 去年の気候変動で干ばつが続き、街の水源であるミード湖の水位は何と26フィート(8m弱)も下がり、沈んだ船から何からあらゆるものが露出した。何体かの遺体も見つかり、そのなかの一体は樽に詰められた70~80年代のものだった。
 “5体目が見つかったんだよ!”とコリィは叫ぶ。“まったくもってクレイジーだね! ギャング関連なんだろうけど、俺たちの飲み水なんだぜ!”
 今日のコリィは生き生きとしていて、ニヤニヤしたりふざけたりと、みんながメタル界の自称“偉大なるビッグ・マウス”に期待する、あらゆる魅力を見せつけている。ヨーロッパ・ツアーをスタートする前に、《ノットフェス・ロードショウ》でアメリカとカナダを行き来していたスリップノットのツアーは、すでに6ヵ月間も続いている。9つの頭を持つ獣を見た誰もが、“彼らの調子は素晴らしく、毎晩何千人ものマゴッツ(※maggots/蛆虫……バンドのファンを指す)を喜ばせている”と証言するだろう。
 だが前回2019年、6枚目のアルバム『ウィー・アー・ノット・ユア・カインド』に先んじてメンバーと話をしたとき、状況はバラ色とは言えなかった。コリィは両膝の手術からの回復中で、パーカッショニストのクリス・フェーンはバンドを抜けていた。そして、クラウンは娘のゲイブリエルを失うという悲劇に見舞われていた。彼らの会話のトーンは反抗的であり、緊迫したものだった。“ある日俺たちは、ふといなくなるだろう”と、ジム・ルートは私たちに告げてもいたのだから。
 だから、彼らの新しい7枚目のレコードのタイトルが『ジ・エンド・ソー・ファー』(=“ひとまずの終焉”の意)だと聞いたとき、心配せずにはいられなかった。我々は、彼らのスワン・ソング(※最後の作品)を聴こうとしているのだろうか?
 幸いにも、コリィは早々に安心させてくれた。彼によれば、このタイトルは“スリップノットの第三期”のことであり、バンドのひとつのチャプターが終わったことだと言う。ひとつ目は凶暴性、ふたつ目は発見、3つ目は喪失、4つ目は再発見、そして5つ目は……。
 “向き直って未来を見つめると言うのかな、「次は何だろう?」みたいな感じ”と彼は考えにふける。“俺たちを改めて紹介するのではなく、なぜ俺たちがこれをやりたいのかを再発見するということ。スリップノットだからクソ難しいけど、イカしているよ。バンド内の個性が広がっているという事実も気に入っている。丸くなったやつもいるけど、変わらない部分もある。そして、みんな本当に何かがやれるんだということがわかった。だからこのタイトルは<傾向の終わり>であり、俺たち自身を表現する勇気を真に持つということに、自意識過剰になっていたことの終わりということでもあると思う。基本的には「かつてそうだった」ものの終わりであり、「未来ではこうなりうる」というものの始まりということさ”
 コリィの言葉は少々難解すぎるかもしれないが、ニュー・アルバムを聴けば、すべて意味がわかることだろう。と言うのも、『ジ・エンド・ソー・ファー』は、ここ何年もの間で最も実験的なスリップノットのアルバムだからだ。
 リード・シングルの「ザ・チャペルタウン・ラグ」や「ザ・ダイイング・ソング(タイム・トゥ・シング)」では、彼らのいつもの凶暴なスタイルが見られたが、ブルージィなリズムや合唱隊、ゆがんだソロが加えられたアルバムには“広がり”が見られる。これはスリップノットだが、我々の知っているスリップノットではない。
 “みんなには、「これは『VOL.3:(ザ・サブリミナル・ヴァーシズ)』の自然な仲間だ」って言っているんだ”とコリィは説明する。“と言うのも、『VOL.3〜』で俺たちは真の自分自身になり始めたから。ただ全力で激しくやるだけでなく、自分たちの曲作りに自信を持ってリスクを冒し、自分たちのやっていることを拡大することができたんだ。ただ近年はバンド事情のせいで、俺たちはそういうことができるバンドだということを忘れてしまっていた。それに触れることはあっても、「バンドでやれることの限界を本気で押し進めよう」と申し合わせるよう立ち返ることはなかった。だからある意味で、こういう世界構築に立ち戻るのは心地よかったよ”

 

◎続きは『METAL HAMMER JAPAN Vol.12』  でどうぞ

 

『METAL HAMMER JAPAN Vol.12』発売中!

 

 
最新アルバムが発売中!