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《スペシャル企画》TikTokはメタルを救うのか?【『METAL HAMMER JAPAN Vol.13』より】

メタルがメイン・ストリームに復活するための鍵を握っているのはTikTok!?

 メタルがメイン・ストリームに復活するためにはどうすればいいのか? 近年、SNSの普及によって情報の伝達が早くなり、さまざまなトピックがより簡単に手に入るようになった。SNSをきっかけに一夜で生活が大きく変化する昨今、TikTokによりメタルも一瞬で流行の音楽になるのか!?
 そこで、3年前にリリースした曲が去年TikTokでバズったゴーストのトビアス・フォージや、同SNSによって人気を集めたアーティストたちに、その現状を教えてもらおう。
 後半はBroken By The Screamの雲林院カグラと花冷え。のユキナとの対談にて、日本のバンド系SNS事情も把握していきたい!

Interpretation by Mirai Kawashima

 

俺はTikTokのユーザーじゃないから、
それが何を意味するのかもわからっちゃいないしさ。
トビアス・フォージ

 る2022年9月、奇妙なことが起こった。3年前(2019年)に発表されたゴーストのシングル『Seven Inches of Satanic Panic』のB面に収録されていた「Mary On A Cross」が、アメリカのビルボード・トップ100入りし、期せずしてこのスウェーデンのバンドの最大のヒットになったのだ。この遅れた成功の理由はただひとつ。TikTokだ。
 その数週間前、<@editingtherapy>という名のティックトッカーが、『ストレンジャー・シングス』のシーンを集めたコンピレーションのサウンドトラックに、この曲をスロー・ダウンさせ使用したのだ。大成功したNetflixのドラマとのつながりが人々を引き寄せたのだが、彼らの注意を惹いたのが「Mary On A Cross」だった。オリジナルのクリップに収録されたのに引き続き、曲自体も拡散されて、最終的に30万以上のビデオで使用され、ハッシュタグは10億という膨大な数を記録した。
 “最初に気づいたのは娘だったと思う”とゴーストのフロントマン、トビアス・フォージは言う。“彼女がTikTokで「Mary On A Cross」を聴いたって。以前にも別の何曲かで、彼女はそんなことを言っていたんだ。それからレーベルのミーティングに呼ばれて、「今起きていることに気づいていているかい?」なんて感じで、そして彼らは統計資料を説明し始めたんだ”
 今でも彼は懐疑的なままだ。“こういうことは、思いっきり割り引いて聞くことにしている。俺はTikTokのユーザーじゃないから、それが何を意味するのかもわからっちゃいないしさ。ストリーミングで曲を聴く人たちが、その曲を気に入っているとは限らないこともわかっているから”
 メタル・コミュニティで、TikTokの持ちうる影響力に疑問を呈するのはトビアスだけではない。このプラットフォームへの言及は、そもそもそれが何なのかという困惑から、Z世代の“口パク・シンガー”やおそらく最も有名なインフルエンサーへの非難まで、さまざまな反応を引き出す。
 しかし事態は変わり始めている。TikTokは複雑であるにしても、強力な音楽業界の一部分となった。これは、すぐに利用できる流行の仕掛けであり、メタルを含む“これがなければ多くの人からは無視されかねない曲やジャンル”への注目を集めうるものだ。
 メタルの復活の鍵を握ることになるのは、絶対にTikTokだと思う。90年代の終わりや2000年代初頭のように、メタルが人気になるのを見ることになるわ”と、アメリカのバンド、DEADLANDSのシンガーであり、アクティブなティックトッカーでもあるケイシー・カールセンは言う。
 “バンドが文字どおりTikTokでキャリアを積むようになるのも時間の問題よ”ということなのである。

 154ヵ国に10億人のアクティブなユーザーを持つTikTokは、Facebook、Instagramに続く3番目に大きなSNSだ。もともとはおもに“口パク・ビデオ”用のプラットフォームとして用いられていたが、だんだんとコメディアンから料理人、アーティストからセラピストまでが、アルゴリズムによるフィード、あるいはユーザー個人の<For You(お薦め)>ページを通じて、世界中に発信するコンテンツを作れる場となっていった。
 今日、TikTokはあまりにも必要不可欠でパワフルな音楽業界の一部であるため、TikTok発のバイラル・ヒットがSpotify上にカテゴリーを持つほどだ。ポップスのラジオとTikTokの差はほぼなく、ただラジオはTikTokでトレンドになった曲を流すのだ。
 TikTokでメタルやロックがバイラル・ヒットになることは多くはないが、記憶には残るものだ。2021年、ブリング・ミー・ザ・ホライズンが8年前に発表した曲「キャン・ユー・フィール・マイ・ハート」がユーザーに取りあげられ、曲のサビに合わせて蛍光灯の下でポーズを取るのがトレンドとなった。もっと最近では、ニッケルバックの2014年のシングル「シー・キープス・ミー・アップ」が、ユーザーたちが卑猥なダンスやポーズをする、何千ものいわゆる“thirst trap”(SNS上に投稿される性的に誘惑するビデオや写真のこと)ビデオに使用され、大ヒットとなった。バンドはこのトレンドを紹介するコンピレーション・ビデオの隣に“「シー・キープス・ミー・アップ」へのたくさんの愛をありがとう”と書いたほどだ。“まったく予想外だったよ!”と。

 

 

◎続きは『METAL HAMMER JAPAN Vol.13』 でどうぞ

◎後半には雲林院カグラ(Broken By The Scream)とユキナ(花冷え。)の対談も掲載!

 

 

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