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GOJIRA(ゴジラ)【メタルハマー・ジャパンVol.6より】

 

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 現在のエクストリーム・メタル界において、GOJIRAほどミュージシャン/音楽ファンの両方面から強い支持を得ているバンドはいないのではないだろうか。高い演奏力から成る強烈なサウンドはもちろん、音だけにとどまらないメッセージ性の高さとそれに伴うアクションこそがその理由だ。グラミー・ノミネートを始めさまざまな賞に輝いた前作『Magma』から5年、待望の新作となる『フォーティチュード』にも、彼らの訴えが苛烈な音として収められている。

 本稿ではバンドの創設メンバーであるジョーとマリオのデュプランティエ兄弟が、GOJIRAの骨子が生まれた背景、そして新作に込めた想いについて語ってくれた。25年に及ぶキャリアを持っているGOJIRAではあるが、彼らは2020年代の先端を進むバンドでもあるのだ。

Translation by Tommy Morly

 

 ジョーとマリオのデュプランティエ兄弟はGOJIRA にとって7枚目のアルバムとなる『フォーティチュード』に取りかかっていた2019年の秋、“アマゾンが燃えている”というニュースを目にした。 

 決して自然発生的な小さなものではなく、何エーカーも燃え広がって農業や林業に従事する者、そして野生の生態を襲い、ブラジルを始めとした南米各国の民族を脅かしていた。しかし多くの人にとっては自分と無関係のデイリー・ニュースであり、翌日には普段の生活が待っていた。しかしデュプランティエ兄弟にとって、そうではなかった。

 同日、腹の虫が収まらない彼らは楽器を手に、怒りを発散すべくプレイした。その結果として生まれたのが最新のシングル「アマゾニア」だ。ジョー・ハープ(※口琴)によってドライブされ、喉の奥から吐き出される歌唱、また民族的パーカッションの集中砲火はまるで『ルーツ』時代のセパルトゥラに通じるものもあり、同曲は瞬く間にグルーヴ・メタルのアンセムとなった。曲中、ジョーは《The greatest miracle is burning to the ground!/最大の奇蹟が焼け落ちようとしている!》と叫ぶ。

 しかしアマゾンで起こったこの危機について、彼らは満足できなかった。バンドは実際に“何か”行動をしたいと考え、オンライン・オークションを立ち上げ、リミテッド・エディションのアート・プリントを販売し、その収益を[The Articulation Of Indigenous Peoples Of Brazi (lAPIB)]という団体に寄付する。さらにフロントマンのジョーは方々に電話をかけ続け、どういった援助ができるのかを問い合わせ、現地団体のリーダーたちと会うことになった。

 “そういった人たちと話をすることは、とてもエモーショナルで強烈なものをもたらしてくれた。俺は震えていたよ”と、ジョーは当時のことを回想してくれた。“ZOOMを介してのことだったんだけど、こういった状況で彼らはモダンなツールを使って対話を行なってくれた。彼らは常に犯罪組織による攻撃、銃撃、放火から自分たちを守っているんだ”

 GOJIRAは、ほかのバンドと大きく違うところがある。彼らはこういった事態を前にして無力さを感じつつも、決断力に基づいた行動をとり、怒りに満ちながらも素晴らしい音楽を作っていく。まるで生きている意味を模索し、現在目の前に広がる世界をより良い場所にすべくその方法を探しもがいているようにも感じられはしまいか。

 彼らはここ数年のなかで久しぶりの、メタルのしきたりから踏み出ようとするバンドなのだ。それはスリップノットのマスク、サバトンの戦車、ゴーストの司祭的ギミックを用いるのではなく、あくまでも純粋に自分たちらしくあり続けることで実現しようとしている。 生死に対する屈託のない望みや恐れは、とてつもない勢いとともにバンドが作る音楽のなかで表現され、リスナーはそこから力がもらえることだろう。

 前作である2016年発表の『Magma』について、メタリカのカーク・ハメットは“驚異的な芸術作品”と表現している。また彼らは後続世代をもインスパイアしていて、 BLACK PEAKSのフロントマンであるウィル・ガードナーは、2005年のアルバム『From Mars to Sirius』以来のファンであることを公言。“俺は彼らのユニークでパワフル、そしてエモーショナルでディープなサウンドに引き込まれてしまったよ。バンドの音楽は信じられないくらいヘヴィで超テクニカルであるのと同時に、その核には人間らしさが存在しているんだ”と語っている。

 

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 GOJIRAは今、新アルバム『フォーティチュード』をリリースしようとしている。本作はカタルシスを起こすかの如く垂れ流されるブラスト・ビートのみならず、瞑想的なチャントが秘める力に価値を置いた驚くべきアルバムだ。マラソン選手を沿道から応援するサポーターのように彼らは人々を力づけ、各リスナーたちが背負ってきた障害を取り除き、どんな人にもポテンシャルがあるということを気づかせてくれる。GOJIRAは単なるひとつのバンドという枠組みを超えた、現在のメタル界が必要としている存在なのだ。そしてこの地球が必要としているバンドでもあるのだ。

 GOJIRAは典型的な“お高く止まったバンド”ではなく、自身もそれを自覚している。ジョーはインタビューに一番乗りで現われたが、その一方でドラマーである弟のマリオは、私たちを待たせ続けた。ジョーは“アイツはなんてロック・スター気取りなんだ!”と、若干大人しめにしたフランス版のアクセル・ローズ”に電話をしてくれた。

 彼らがセックス、ドラッグ、ロックンロールにまつわるストーリーを書くことはないが、 着飾ることのない自分たちらしさを持っている。謙虚だが冷静なジョーがリードして質問に答え、その一方でマリオは昔のことなどは 記憶の彼方に......といった具合。

 ふたりが前身のGODZILLAをフランスで結成したのは1996年のことで、ジョーは19歳、マリオは14歳だった。USアンダーグラウンド から出てきた身の毛のよだつたくさんのバンドに触発され、自身たちが崇めてきたヒーロー を目指して音楽を作ってきた。「Brutal Abortion」、「Rigor Mortis」、「Bleeding」は、初期のデモに収録された曲のタイトルである。

 “俺らは常にああいったエネルギーを求めていて、モービッド・エンジェル、カンニバル・ コープス、デスといったバンドを聴いていた。 死、ゴースト、恐怖、そして血みどろの出来事に対して憧れを抱いていたんだね。どことなくゲームのルールを理解することに似ていた気もするよ。なんていうか、ああいった世界にちょっとずつ自分たちを合わせていった ような感覚だ。しかしかなり早い段階からそういった狭い世界から抜け出し、どうしたら自分たちの世界観を作れるのかを理解してもいって。マリオはかなり真剣に取り組んでいて、あの頃コイツは長髪で......”とジョーが説明してくれた。

 “そうなんだ。当時の俺の夢はフロリダのタンパに行くことだった”と、興奮気味にマリオが話す。“モービッド・エンジェル、カンニバル・コープス、デスたちが独創的なアルバムをレコーディングした[モリサウンド・スタジオ]に行くことを夢見ていたよ。あのスタジオから生まれたプロダクションはすべ てアメイジングだったから”

 2001年リリースのデビュー・アルバム『Terra Incognita』で彼らは独自の世界を展開 した。ときを同じくしてオリジナル・ベーシス トのアレクサンドル・コルニヨンはジャン=ミ シェル・ラバディに交代し、バンド名をGOJIRAとしデス・メタルの新たな光となった。棍棒で殴りつけるようなオープニング曲「Clone」は母なる大自然を犯すことへの警鐘をクリーンな歌声で鳴らし、プリミティブなパーカッションや叫び声が各楽器パートの背景に配置されていた。そして「Love」というタイトルの曲さえ収録していた。

 ジョー曰く“俺らは突然閃き、そして気づいたんだ。曲に「Love」と名づけたってかまわないってことにね。 愛に関する曲で、それがデス・メタルであったとしてもまったく問題なかった。愛っていうのはとてもパワフルで、ときにはとても破壊的になれるものだよ。 俺らはかなり早い段階から<自分たちの音楽には何が許容でき、何がダメなのか>といった考え方をしなくなっていったんだ”

 

◎続きは【メタルハマー・ジャパン Vol.6】 でどうぞ

 

 

 

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