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METAL HAMMER JAPAN 編集部ブログ

ポール・ギルバート【メタルハマー・ジャパンVol.6より】

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 その卓越したプレイにて、1980〜90年代を代表するギター・ヒーローとなったポール・ギルバートだが、ソロ名義での作品ではテクニックもさることながら各楽器のメロディがハミングし合う楽曲を作り続けており、発表したばかりのインスト作『ウェアウルヴズ・オブ・ポートランド』でも、歌心溢れるギターを響かせている。ただし、彼の芯にはレーサーX〜MR.BIGで轟かせたヘヴィなギター愛が溢れていることも忘れてはいけない。今回はそんなポールに、自身が考えるヘヴィなサウンドについて語ってもらおう。実に多様な音楽からインスパイアを受けてきたからこそ、ハードなプレイからメロディアスなフレーズまで、自由自在に生み出せるということがわかるだろう。

Translation by Tommy Morly

 

誰しも子供のときに聴いていたものから何かしら拝借するものさ(笑)。

 

―『ウェアウルヴズ・オブ・ポートランド』でも聴けるように、現在はとてもハッピーなギター・ミュージックを届けてくれるポールですが、10代の頃は、やはり“人よりもハードに、人よりもエクストリームに”という気持ちを持っていたのでは? 

 少しはあったと思うな。特にスネアの爆発する感じとか、ギターがヘヴィに刻む80年代のサウンドが大好きだったね。でもビートルズみたいにハーモニーに溢れた音楽も好きだったから、僕の耳はもっとメロディックなものに向いていたかも。メタリカはグレイトなメロディもあるけど、彼らが出てきてから1コードものが頻出してきた。でもそれを悪いことと思わないし、ああいうスタイルには合っていたと思う。バート・ バカラック(※作曲家/ピアニスト)の曲をメタリカみたいにアレンジするのはさすがに無理だからね(笑)。

―ハハハ、確かに。 

 そう、だから半音ずつズラして不協和音を作るような、リフ重視のサウンドっていうのは僕には向いていなかった。スラッシュやデス、ブラックといったメタルはクリエイティブでヘヴィなテクスチャーはあるけど、ハーモニーという観点では僕が好きな類ではなかったんだ。それは僕がピアニストによって作曲された70年代のポップ・ソングを聴いて育ってきたからというのもあるだろうね。

 ―今挙がったバート・バカラックやビートルズ、そしてジミ・ヘンドリックスやクラシック音楽といった幅広いルーツを持っているあなたですから、当時、周辺のメタル・プレイヤーたちと比べ“自分はより広いバックグラウンドを持っているんだな”と感じることも?

  それはなかったかな。例えばトニー・マカパインの初期のアルバムを聴いてみると、彼はハーモニーに関して明らかに僕より多くのことを知っていたのがわかるよ。そもそも彼はクラシック・ピアノをプレイしていたからね。レーサーXの「イントゥ・ザ・ナイト」(『ストリート・リーサル』1986年)のブリッジにはアルペジオ・パートがあるけど、これはもともとチープ・トリックの「永遠のラヴ・ソング」のBメロから頂戴しているし、MR.BIGの「トゥ・ビー・ウィズ・ユー」なんて同曲のサビをかなり意識しているよね。「ファイアー・オブ・ロック」(レーサーX『テクニカル・ディフィカルティーズ』1999年)のヴァースなんてトッド・ラングレンの「友達でいさせて」からコードをもらっている。誰しも子供のときに聴いていたものから何かしら拝借するものさ(笑)。

―GIT在学時代など、この音はすごいと思っていたハード/メタル系バンドは? 

 ラウドネスは特に好きだったね。『Disillusion〜撃剣霊化〜』(1984年)と『Devil Soldier〜戦慄の奇跡〜』(1982年)はたまらなく好きなアルバムだったし、シングルの「Road Racer」も素晴らしかったね。「Crazy Doctor」は当然はずせないし、昔のアルバムには僕の好きなものが詰まっていたよ。

 ―あなたのラウドネス好きは有名ですね。 

 ほかにはアクセプトもカッコよかったな。「レストレス・アンド・ワイルド」のリフなんて最強にパワフルだし、「ファスト・アズ・ ア・シャーク」のツーバスには頭が吹っ飛ぶような気分になったさ。イングヴェイが出てきたとき、彼のあの速いピッキングには興奮させられたね。クイーンズライチの『オペレーション:マインドクライム』なんかもクールだったよね。

―そういった先人の作品があるなかで、 どのような音を作れば個性が出せると考えていましたか? 

 自分がユニークであることにはこだわらなかったよ(笑)。そういうのって結果としてついてくるものだからさ。より上手くなることだけを考えていたな。

―なるほど。 

 当時の僕にとっては、曲を書くことが大きな課題だった。まだコツをつかんでいなくて、思うように曲が書けなかった気がするよ。今ならある程度技術が身についていて、メロディからスタートすることでかなり簡単に曲が作れるようになった気がするね。歌詞やメロディを出発点とするトラディショナルなやり方って、実は軽んじることのできない優れた方法だと思う。レーサーXなんか特にそうだけど、複雑に入り組んだギター・リフにヴォーカルを詰め込むみたいなやり方だと、シンガーにはかなり難しい要求をすることになってしまう。そのため一曲に2ヵ月かけたこともあって、あまりお薦めできないし、僕はこのことに気づくまで長い年月がかかってしまったから(笑)。

 

 

◎続きは【メタルハマー・ジャパン Vol.6】 でどうぞ

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