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METAL HAMMER JAPAN 編集部ブログ

ダニ・ウィンター・ベイツ/ベリー・トゥモロー【メタルハマー・ジャパンVol.3より】

内面を解放し感情を爆発させる
メタルコアの真価を突き詰めたバンド最高作!

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約20年前に発起したメタルコアは、ある意味では成熟の域に達しているジャンルとも言えるが、そのシーンからは常に強烈な個性を持ったバンドが今も多く輩出されている。そのなかでも、正統派とも言えるアプローチで界隈を牽引するのが英国出身のベリー・トゥモローだ。2018年にリリースされた『ブラック・フレイム』はバンドの評価を一気に押し上げたアルバムだったが、今夏に発表された最新6th作『カニバル』は、その冒頭数曲を聴いただけで“前作を超えてきたぞ!”と強く感じさせられるものだった。本作には、フロントマン=ダニ・ウィンター・ベイツのパーソナルな面も大きく関与しているという。それがどのように楽曲へ落とし込まれたのか……ダニが自ら語ってくれた。

Translation by Tommy Morly

 

騒動が収まったあとのコンサートは、従来とは違う凄まじいものになると思う。

―早速ですが、新作『カニバル』は力強いメロディを内包した、前作『ブラック・フレイム』にも負けない作品になりましたね!
 本当に信じられないくらい、いい作品になったよ! レスポンスもクレイジーだし、俺らにとって今までで最高の作品となった。作曲の段階から今までどおり自分たちを追い込んだし、歌詞にも強いメッセージを込めてさらに磨きをかけていった。チーム一丸となって労力を割いたし、その出来栄えについては本当に誇りに思っている。
―初出としては「ザ・グレイ(VIXI)」が昨年11 月に、「カニバル」が今年1 月に公開されました。本来は、もっと早くアルバムをリリースするハズだったのでは?
 そのとおり! 4 月の予定だったけど、コロナ・ウィルスのおかげでほとんどの流通先がシャットダウンしてしまい、このままだとデジタル・コピーでしかリリースできないということになってね。でもCD やレコードといったフィジカルを求めるファンがいるのもわかっていたし、その一方でストリーミング・サービスもあるから、少しずつ遅らせて順次リリースすることにしたんだ。
― 仕方がないとはいえ、自信作を寝かせておくのはさぞ歯がゆかったことでしょう。
 レコードが完成したまま置いておくというのは最悪な時間の使い方だと思っているし、もしリリースが来年になれば苦痛は倍以上になるからそれはどうしても避けたかった。最終的には、ライヴができないかわりにアルバムという形でファンのもとに音楽を届けられたんだから、不満ばかりではないよ。
―「カニバル」のMV は再生数も非常に好調で、本来の4月にリリースされていれば、その後のツアーや夏のイベントなど大きな展開があったでしょうね。
 そうなんだよ! こっちは準備万端で、今年は2010 年以降一番忙しい1 年になるはずだった。なんてったって俺らはメタル・バンドだし、ライヴをこなしてナンボみたいなところがある。ただ、貧乏くじを引かされたのは俺らだけじゃなくて、どのバンドもこの危機的状況に面している。こんなにもライヴをしなかったことは初めてで、とてもクレイジーに感じているよ。
―1 年近くはライヴから遠ざかることになりそうですが、“ライヴ感”が薄らぐのでは……と不安に思うことは?
 体が覚えているだろうね(笑)。今すぐライヴをしろと言われても、ある程度のことはできるだろうさ。イギリスでは最近になってやっと練習スタジオも解禁になったんで、リハーサルをしないかと皆で話し合ったんだ。これはあくまでも感覚を失わないようにというものだけど、この困難にただ打ちひしがれるだけっていうのもムカつくだろ? ライヴができる日に向けて、ちょっとずつ練習を続けていくつもりだ。
―大切な心構えだと思います。
 改めて考えると、ライヴをやるっていうのは本当にクレイジーなことだよ。バンドにとっては緊張感があり、ファンはクレイジーになり、これってとてもエキサイティングなことだと思う。だから一連の騒動が終わったあとのコンサートでは、それまで溜まっていたものが一気に解放され、従来とは違った凄まじいものになると思う。これはメタルのみならず、音楽産業全体に対しても言えることだね。

 

リスナーにはバンドのすべてをアルバムから感じてもらいたい。

―前作が非常に高評価だった分、本作でのテーマや方向性の精査は難しかったのでは?
 俺らは常にヘヴィであり続けようと考えていて、それは今作だけの話じゃない。1st アルバム(『PORTRAI TS』)から11 年になるけど、自分たちのサウンドを焼き直したいとは思っていないよ。目指しているのはシンプルに自分たちがやっていることを常に良くしていくことかな。
―従来と同じではインパクトが薄れるし、大きく舵を切るとこれまでのファンがガッカリしてしまう……という懸念はありますよね。
 まさに、常にそのことを考えているんだ。“クリーン・ヴォーカルを増やせばもっと曲は映えるのか?”、“サウンドをガラリと変えれば、もっとファンは寄ってくるのか?”といった具合でね。ただ明確に決めたことがひとつあって、それは“自分たちが好きな音楽をプレイする”ということ。名声や富のために音楽をプレイするわけじゃなくて、ヘヴィでメロディのある音楽をプレイする……それはまさしくメタルコアそのものをプレイすること。
―まさに!
 だから作曲する際もさっき挙げたことを意識し過ぎているわけじゃないし、ある程度曲ができてきたら、アルバムが必要としている方向へとさらに作り込んでいくんだ。それから“ヘヴィな曲が多過ぎないか? もっとライトな曲も入れるべきか?”という感じで調整を行なっていく。リスナーにはこのバンドのすべての要素をアルバムから感じてもらいたいからさ。
―前作を経て一番の収穫だったこと、経験値として得られたことはなんだったでしょう?
 “Less is More”ということかな。メタル・バンドってクレイジーで複雑なパートを目指しがちで、確かにここ最近は俺らもやってきた。バンドが始まった頃って、自分ができることを必死になって見せようとするよね。ドラマーやギタリストなら、最高のプレイを見せることに意識が向きがちだ。でも俺らがすべきことは、彼らにアメイジングな曲を提供することさ。『ブラック・フレイム』でもそれはできていたとは思うけど、今回はさらに突き詰めて、エンジョイするポイントが明確に伝わる作品になったと思うね。

◎続きは【メタルハマー・ジャパン Vol.3】でどうぞ

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『カニバル』
ソニー/SICP-6339

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