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マルテン・ハグストロム(メシュガー)×ロブ・フリン(マシーン・ヘッド)【『METAL HAMMER JAPAN Vol.10』より】

 トップ・ミュージシャンによるトップ・ミュージシャンへのインタビューである本スペシャル対談企画。まずはマシーン・ヘッドのロブ・フリンによる、メシュガーのマルテン・ハグストロムへのインタビューをお届けしよう。
 マルテンが加入してすぐのツアーにて共演した2バンドであり、今では気心の知れたギタリスト同士でもあるふたり。今回は先輩であるロブが、マルテンのメシュガー加入までの道のり、そして帯同ツアーでの出来事について話を掘ってくれた。

 

Interpretation by Mirai Kawashima


トーマスはデカいオイル・タンクを叩いたものさ。 

 スウェーデン出身のメシュガーは、本物のテクニカル・メタルの明確なヴィジョンを持っている。35年前にウーメオ(Umeå)で結成されて以降、ニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタルへの愛で結束している彼らは、驚愕的なヴォーカルを乗せた、頭がクラクラするようなポリリズムとともに、継続的にヘヴィ・ミュージックの限界を推し進めてきた。
 意図せずに“ジェント”を発明したことに加え、彼らのDNAは現代のメタルのほぼすべてに織り込まれている。
 マシーン・ヘッドのフロントマンとして、強烈なリフに親しんできたロブ・フリンであったが、そんな彼も1994年のEP『None』の容赦ない攻撃には度肝を抜かれ、彼らをヨーロッパ・ツアーへと帯同させた。
 9枚目のアルバム『Immutable』のリリース直前に行なわれた、ロブとメシュガーのギタリスト、マルテン・ハグストロムの会話には、間違いなく仲間意識とお互いへのリスペクトが存在している。そして、マルテンが『Immutable』のセッションから生まれた未使用の素材について“まだアルバム3枚分は残っている”と興奮して語る一方、我々はこれまでバンドが歩んできた旅路にも興味がある。学生時代にまでさかのぼるドラマー、トーマス・ハーケとの出会い、そして大工仕事への回り道から、8弦ギターの入手……実に並はずれた進化と言えるだろう。

 

ロブ・フリン トーマスのことは6〜7歳の頃から知っているそうだね。

マルテン・ハグストロム そうなんだ。近所(エルンシェルツビク/Ornskoldsvik)で育ったからね。同じ幼稚園に通っていて、6歳のときに知り合ったんだ。最初はただの友人だったよ。まぁ、あの年齢だと誰もが“友達になるか、最悪の敵になるか”だけど、彼はたまたま俺に気に入られたのさ(笑)! 12歳の頃には、共通の興味があることにも気づいてね。どちらも音楽が好きだったから。俺はすでにギターを持っていて……母親が親戚から手に入れたものだけど、適当に弾き始めていたよ。そのときトーマスはドラムに惹かれていたんだ。

ロブ 学校でも特別仲が良かった?

マルテン 親友だったよ。一緒に学校に通い、一緒に音楽をやり、同じ年に1年間の休暇をとり、一緒に大工仕事をしたりもしたから。それからこのバンド、この音楽……ラッシュにインスパイアされたスラッシュ・メタルという奇妙なことを続けているのさ。

ロブ それじゃあ、ギターを弾き始めた頃のことを教えてもらおうかな。最初のジャムでは何を演奏したの? 12歳でラッシュということはないよな(笑)!

マルテン それはなかったね(笑)。ジューダス・プリーストの「ブレイキング・ザ・ロウ」みたいな一番シンプルなニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタルさ。ちょうどメタリカの『キル・エム・オール』が出た頃でね。政府が援助しているラジオ番組があって、UFO、レッド・ツェッペリンから、当時の最新曲までかかっていたんだ。子供の頃は知らなかったけど、スウェーデンの多くのキッズがこれを聴き、録音していたそうだよ。“当たりの曲”がかかるのを待ちながらね。インターネットもなかった時代、このラジオは12〜13歳の子供にとっては宝の山だったね。だけど奇妙なことに、俺たちはわりとすぐに自分たちの曲を書き始めたんだ。今ではとても聴けたものではないだろうけど、とにかく試してみたのさ。だからカバーを4〜5曲演奏できるようになった頃には、オリジナルも1曲できあがっていたんだ。13歳の頃さ。

ロブ それは何て曲だったか覚えてる?

マルテン おかしな名前だったと思う。「Acid Rain」みたいな。

ロブ ニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル風の曲?

マルテン そうだけど、とても初歩的な曲さ。最初の数回のリハーサルのことは今でも覚えているよ。トーマスの実家の、ヒーター用の大きなオイル・タンクが置いてある地下室でね。そのタンクはいつもほとんど空っぽだったから、ヘヴィな気分になってくると、トーマスがスティックでそれを叩くんだ。そりゃ、耳をつんざくような大音量さ! 超クールだったよ。彼の両親は気に入らなかったみたいだけど(笑)。

 

ふたりの共通のゴール、共通の目的を失ってしまったんだ。 

ロブ それから音楽を中断して大工の学校に行き、そして“これは俺には向いていないな。トーマスと音楽の世界に戻ろう”と思ったんだね。

マルテン そう。俺とトーマスはバロフォビア(BAROPHOBIA)という奇妙なバンドをやっていてね。これは重力恐怖症という意味で、ヘヴィで実験的なことをやりたかったんだ。一緒にやっていたほかのふたりもいいミュージシャンだったけど、彼らはエクストリームみたいな、女性ウケするバンドをやりたがっていて。ともかくもうバラバラで、バンドという感じではなかった。実は16歳の頃、レクリエーション・センターで何度かメシュガーとライヴをやったこともあってね。彼らはドラマーが抜けていたんだけど、すでにいくつかのレーベルから接触があったから、トーマスにコンタクトをして “君は本当にいいドラマーだし、君のバンドも好きだ。俺たちには今ドラマーがいないんだけど、聞いたところによると、今君も本当のバンドをやってはいないそうだね。俺たちのバンドに入るなんてどうだい?”って誘ったみたいで。それでトーマスが俺に相談の電話をかけてきたんだ。

ロブ トーマスにコンタクトしたのは誰だったんだ?

マルテン イェンス(キッドマン)だと思うけど、確信はない。トーマスがウーメオの楽器屋まで買い物に行ったときに、コンタクトがあったんだと思う。だからトーマスは“君を見捨てたくはないけど、バンドはない。そして俺はプレイしたいし、彼らは俺を欲しがっている。どうすればいいと思う?”なんて感じだった。俺は“かまわないさ、やってみなよ。彼らは素晴らしいバンドだ”って答えたよ。スタイルが好きだったんだ。両バンドとも、スラッシュとニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタルというルーツがあったから。それで彼はウーメオに引っ越してバンドに入り、俺は学校で働き始めた。そこでは“集中力をなくしてしまった人たちにアドバイスを与える”というようなことをやっていたんだ。1年半ほどその仕事をやっていたかな。つらかったから、ギター1本だけ残して、ほかはすべて売り払ってしまった。まだ20歳と若かったけど、トーマスとは子供の頃から一緒にやっていたからね。すべてが音楽の議論を中心に回っていたから。

ロブ ある意味、14年来の友人を失ったということでもあるわけだろ? 友達じゃなくなったわけではないけど……。

マルテン そのとおりさ。ふたりの共通のゴール、共通の目的を失ってしまったんだから。ほかのメンバーとはリハーサルを続けてはいて、彼らは“バロフォビアを抜けちゃダメだぞ。これらの曲を練習しないといけないんだから”なんて言っていたよ。そんな気になれなかったけど、ある程度は継続してはいたんだ。それから1991年、メシュガーが[ニュークリア・ブラスト]から1stアルバム『コントラディクションズ・コラプス』をリリースしてさ。その1年後、トーマスから“なあ、まだ演奏してるか? イェンスがヴォーカルに専念するかもしれない”って電話があったんだ。当時のメシュガーではフレデリック(トーデンダル)とイェンスが半分ずつ歌っていたんだけど、フレデリックがもう歌いたくない、と。

ロブ イェンスはギターも弾いていたんだよな。

マルテン そのとおり。だから、どちらもギターを弾いて、ヴォーカルもやっていたんだ。それで彼らはギタリストが必要になり、ストックホルムから何人かがオーディションにやって来たんだけど、あまりうまくいかなかったんじゃないかな。それから俺が何度かリハーサルをやりにいって、“OK、これはいいね”という感じになったんだ。そして1992年の終わりか93年の初め頃、正式にバンドに加入したという感じだね。

ロブ つまり、『None』EPの頃?

マルテン そう。だから俺が入った頃は、『デストロイ・イレイズ・インプルーヴ』(1995年)用の曲作りモードだったんだけど、レーベルがもっとすぐにリリースしたがっていて。だから実は『None』の曲のいくつかには、バロフォビアのアイディアも取り込まれているんだよ。

ロブ へえ、そうなんだ。君が書いた曲は?

マルテン 「Aztec Two-Step」……最後の奇妙なやつだね。スタジオでみんなでメチャクチャにやったっけ。「Humiliative」はリハーサルをしながらみんなで作ったんだけど、いくつかのパーツは俺が書いたな。だけどバロフォビアの曲だったのはSickening」だね。

◎続きは『METAL HAMMER JAPAN Vol.10』  でどうぞ 

 

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