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【名盤回想『復讐の叫び』】ロブ・ハルフォード×イアン・ヒル/ジューダス・プリースト【『METAL HAMMER JAPAN Vol.11』より】

アニバーサリーを迎えた傑作
『復讐の叫び』の誕生秘話

 LSDのトリップ、ヘリコプターでの移動、車の事故。『復讐の叫び/Screaming for Vengeance』はアメリカでジューダス・プリーストをブレイクさせたが、その制作過程での騒動は、バンドをぶち壊すほどでもあった。バンドにとって、そしてヘヴィメタル・ミュージックにとっての最重要作のひとつである本作から40年、『復讐の叫び』はどのような状況で生み出されたのか。ロブ・ハルフォード、イアン・ヒルが、アニバーサリーを迎えた傑作について回想する。

Interpretation by Mirai Kawashima

 

俺たちは死とダンスをしていたんだよ。
>ロブ・ハルフォード

 1969年にジューダス・プリーストが結成されたとき、ヘヴィメタルはまだ存在してはいなかった。10年ののちプリーストはヘヴィメタルのサウンドだけでなく、1979年のツアーではシンガーのロブ・ハルフォードが、今や象徴的な“スタッド・アンド・レザー”の衣装を初披露することで、その美的センスを形作る手助けもしていった。初期のプログレッシブな要素から離れた1980年の『ブリティッシュ・スティール』で、ジューダス・プリーストはUKチャートのトップ10入りを果たし、最高4位にまで達した。
 “『ブリティッシュ・スティール』は初めての決定的なヘヴィメタル・アルバムだった”と、ジューダス・プリーストの創設メンバーであるベーシストのイアン・ヒルは断言する。“まあ少なくとも、ヘヴィメタルらしいイメージを持ったアルバムであり、間違いなく俺たちの初めての決定的なヘヴィメタル・アルバムだった”
 1980年も終わらぬうちに、ジューダス・プリーストはすでに次のアルバム用にスタジオを予約する。初めてイギリス国外でレコーディングすることを決めており、スペインのイビザ島を視野に入れていた。
 “かつては都市のようなゴミゴミしたところでなければメタルは作れないと考えていたんだが、いざスタジオのドアを閉めてしまえば、地球上のどこでも同じだからね”と、ロブ・ハルフォードは言う。“毎日目覚めて、あのゴージャスなバレアレス諸島、イベリア半島の雰囲気を楽しむのは、とてもユニークな体験だったよ”
 イビザは美しかったが、そのマジックはプリーストが作っていたアルバムには反映されなかった。軟弱で過剰にコマーシャルとされた『黄金のスペクトル』は、セールス的にも評価的にも失敗となったのである。“『黄金のスペクトル』をコマーシャルなものにしようと思ったわけじゃない。あれはただ……『ブリティッシュ・スティール』ほどヘヴィじゃなかったというだけのことさ”とイアンは卒なく言う。“いつもと同じように取り組んだ。より良い、一歩進んだ作品を作ろうとね。だけど、踏み出す方向を誤ったんだと思う”
 そんな失敗にもかかわらず、ジューダス・プリーストは『復讐の叫び』となる8枚目のアルバムを作るため、1982年初頭、再び太陽の降り注ぐイビザへと向かった。イビザ島は、まだヨーロッパのパーティの中心地という評判を獲得してはいなかったが、ジューダス・プリーストはイビザの未来を垣間見せようともしていた。何しろ80年代のこと。セックス、ドラッグ、ロックンロールはただの主張ではなく、ほぼ義務のようなものであったのだ。
 “そう、俺たちも、ほかのあらゆるバンドと同じような感じだった。モトリー・クルーはどこからアイディアを得ていたと思う?”とイアンはケラケラと笑う。“何台も車をおしゃかにした。バイクもいくつかダメにしたな”

 “どうやってあのアルバムを作りあげたのか、わからないな”とロブは怪訝そうに言った。“俺たちは死とダンスをしていたんだよ。毎晩街に繰り出して、完全にベロベロになっていたね。イアンは朝の4時にレンタカーでスタジオの前の池に突っ込んで、みんなを起こしたんだから(笑)”
 バンドはしばしばひと晩中パーティをしていたから、スタジオでの実際の作業は散発的で、たいていはメンバーが起きてから、地元のクラブ[Pacha and Ku]に行くまでの間だけ行なわれる始末だった。
 プロデューサーのトム・アロムですら、馬鹿騒ぎから逃れられなかった。“朝の3時にトムが泡風呂へのすべり台をスベっていたことをぼんやり覚えているよ”と、ロブは物思いにふける。“知ってるだろ? 真夜中をすぎると、少々めちゃくちゃになりがちなのさ(笑)”
 しかしながら、バンドで最も悪名高い“パーティ・アニマル”がギタリストのグレン・ティプトンであることは、ロブ、イアンともに認めるところである。“グレンのなかにはキース・ムーンがいるんだよ”とロブは言う。“彼は「こんな技があるんだぜ。ギアをチェンジするのにクラッチなんて使わなくていいんだ」なんて言って、1stからいきなり3rdに入れていたからさ。最終的にレンタカー会社のオーナーから話があると。彼は封筒を持ってやって来て、なかに入った白い粉をぶちまけて見せたよ。俺は「これは最高の話か、それともその反対か?」なんて思っていたよね。結果、その粉はクラッチとブレーキの残りカスだったんだ。だから、別のレンタカー会社を探さなくてはいけなかったんだけど、簡単には見つからなかったね。だって島中に噂が流れていたから”

 

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