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METAL HAMMER JAPAN 編集部ブログ

ポール・ギルバート、コロナ禍を語る

各国のミュージシャンが語る<新型コロナ・ウィルス対策>の現状

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メタル・ミュージシャンに世界のコロナ事情を聞くインタビュー。その第11回は、オレゴン州ポートランド在住のポール・ギルバートが、現地のコロナ事情、そしてオンラインのショウとレッスンについて語ってくれた。彼の言葉からは、コロナ禍であっても、その行動のすべては音楽のためにあるということがよくわかるだろう。

なお、6月15日発売の『METAL HAMMER JAPAN Vol.6』では、これまでのキャリアのなかで変化していった自身が思考える“ヘヴィの流儀”について、また16作目となる最新ソロ・アルバム『ウェアウルヴス・オブ・ポートランド』についてのインタビューも掲載されるので、そちらも見逃さなく。

 

通訳:トミー・モーリー

※インタビューの本篇は、『メタルハマー・ジャパンVol.6』にて!

※インタビューでの状況は、4月末取材時の内容となります。

 

すべての窓が割られた家も頻繁に目にするし、戦争でも起きたんじゃないかと思ってしまう。

そういう状況に対して、コロナ・ウィルスそのもの以上に怒りを覚えるな。

 

―早速ですが、ポートランドのコロナ状況はどうですか?

 僕はずっとスタジオにこもりきりだったから、最も大きなリスクといえばエンジニアと一緒にアルバムを作っていたことだね。でもマスクをずっと着けていたからか、何事もなく過ごすことができたよ。安全に過ごせることを心がけていたし、1回目のワクチンも接種できて、数日後には2回目を打つ予定さ。

 

―それはなによりです。

 ただポートランドの街並みはヒドくて、どこも落書きだらけになってしまった。治安も悪くなっていて、ダウンタウンなんて目も当てられない状況だよ。すべての窓が割られた家も頻繁に目にするし、戦争でも起きたんじゃないかと思ってしまうよ。悲しくもあったし、そういう状況に対してコロナ・ウィルスそのもの以上に怒りを覚えるな。

 

―これまでの対策でうまくいったと感じた部分、効果が薄かったと感じる部分はありますか?

 それはよくわからないかな。僕の立場で誰かをとがめるなんて想像できないし、そもそも僕はそういったことを仕事にしていないから(笑)。ミュージシャンであることの素晴らしさって、誰もがナイスに接してくれることなんだ。世界中のどこの国に行っても、自分がやってきたことに対してみんながハッピーになってくれる。でも政治家になると敵対視されることも多いだろうし、自分がそういった状況になるなんて想像ができないな。僕が音楽をやっているのは音楽が好きだからで、プレイできるだけでハッピーだよ。それに音楽は人々を団結させるものだろ? どうやって生きていくかは別としても、やっぱり世界中を旅して音楽をプレイすることってそれ自体がグレイトなものだからさ。

 

―今では世界中でマスクをすることが有効とされていますが、欧米の人は今もマスクをしたくないという感覚も薄くはないんですよね?

 まぁ、その気持ちもわからなくはないんだけどね。でもマスクを着けることで安心できるっていう側面も忘れてはならないよ。もちろんどの程度効果があるのかはいろいろと議論の余地もあるだろうけど、こちらがマスクを着けることで他者が安心してくれるわけで、逆にはずしていることを不安に思う人たちも出てきてしまうだろうから。“あの人マスクをしていないけど、本当に大丈夫なの?”という目で見られるんじゃないかな。僕としてはそういったところには注意していて、トラブルに巻き込まれないようにしながら音楽をプレイし続けたいから。

 

―そんななか、日本政府は現在の時点でもオリンピックを開催するつもりでいます。現在の状況から、開催を望まないという意見は少なくありません。他国からしてみると、まだほとんどの人がワクチン接種を受けてない国に、トップ・アスリートたちを送り込むことになります。アメリカ国民として、そういったことに対してどう感じますか?

 どうやって実現させるのかはわからないけど、関係者のワクチン接種、マスク着用、ソーシャルディスタンスといったことを徹底的に守れればできなくはないことだと思う。でも、本当にそれが守れるのかは難しいところだし、もし僕が明確な答えを持っていたらぜひ偉い人に教えてあげたいよ。ギターの弾き方ならいくらでも教えてあげられるけど(笑)、僕だって一般的な国民と同じく家族と安全に暮らす方法を模索している立場だから。僕は6月にニューヨークで開催される[ギター・キャンプ]に参加するんだけど、もしこれが予定どおり実施されれば飛行機に乗って移動するし、100人くらいの参加者と一緒に過ごすことになるだろう。これは僕にとって、この生活が始まってから初めてとなる公の場に出るイベントになるんだ。

 

―そうなんですね。

 僕は命知らずな人間じゃないし、できることなら矢面に立ってリスクを背負うようなことはやりたくないよ(笑)。“先に行ってこい。お前がどうなるのか見届けてから俺たちは動くようにする!”なんていう人たちの見世物になるのはゴメンだね。それにもう若くないっていうのもある。だからやはり慎重に行動したくはなるよね。

 

―そうですよね。さて“ギターのレッスンならまかせて”という言葉どおり、ここ15ヵ月ほどは、自宅からオンライン・レッスンをしたり、ストリーミングでショウを配信したりしてきました。トップ・ギタリストの演奏をアップで観たいというプレイヤー系ファンは多いでしょうから、ある程度の終息後も、しばらくはそういった活動を継続するのもアリな気がしますね。

 オンライン・スクールはけっこう忙しくて、今のところは1000人くらいの生徒がいると思う。ただこれは大変なだけじゃなくて、個人的にも充実した素晴らしい時間なんだ。自宅にいながらも音楽を使ってコミュニケーションが取れたり、僕自身も音楽的なことに思いを馳せることができる。オンラインのコンサートのためには、妻と一緒にかなりの準備をしたよ。35曲をメドレーでつなげるなんてこともやったし、その曲のすべてが複雑なものだったりしたんだ。「魅惑のブロードウェイ」(※ジェネシスのカバー)なんてかなりクレイジーな選曲だったと思う(笑)。

 

―無観客でのショウの手応えとは?

 オーディエンスを感じないままプレイするのは、大きな違和感があったね。ショウというのはその空間にいるオーディエンスを感じるものさ。彼らの目を見ればそのパフォーマンスを気に入ってくれたのかどうか明らかにわかるし、その場でグッドなコミュニケーションが取れるものだ。オンライン・コンサートでもチャットという形で反応は得られるけど、従来のライヴとはまったく別の感覚だったな。もちろん何もやらないよりは全然良かったわけで、それが悪いという意味ではなく、どことなく変な気がしたということだよね。

 

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◎この続きは【メタルハマー・ジャパン Vol.6】 で!

 

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