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エイミー・リー/エヴァネッセンス【メタルハマー・ジャパンVol.5より】

新作『ザ・ビター・トゥルース』に込められた、エイミー10年分の想い

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デビューから18年、シーンのパイオニアとして光を放ち続けるエヴァネッセンスだが、今回リリースされる『ザ・ビター・トゥルース』は、オリジナル・スタジオ作としては実に10年ぶりとなる。その間にはメンバー・チェンジもあり、ヘヴィ・シーンにおけるトレンドの移ろいもあった。そのなかで“エヴァネッセンスそのもの”といえるエイミー・リーは、どのようなメッセージを本作に込めたのか。創造の源、ファンとの関係、シーンにおける女性ヴォーカリストとして......彼女が導き出した音楽の内面にある想いを聞く。

 

Translation by Tommy Morly

 

アルバムをこの時期にリリースすることには意味があって

それだけ私は吐き出さなければならない想いがあったということ。

 

―本日は弊誌のインタビュー、ありがとうございます。

 こちらこそありがとう。本当に日本が恋しくてたまらないの!昨日と今日と日本のメディアから取材を受けているけど、おかげでホームシックみたいな感覚になっちゃっているわ。

―新型コロナ・ウィルスによる現在のアメリカの状況はいかがですか?(※1月末取材時)

 今住んでいる周辺は全然問題ナシよ。もちろんニュースなんかで知っていると思うけど、私たちの国は不安定な状態にある。最近は新しいリーダーの選挙があって、彼に対して国民はみんな期待を込めているし、私は本当に何かが変わるんじゃないかと強く想っているわ。でも私たちはたくさんのことを経験してきたし、とてもヘンな時代に生きているとも痛感している。これは地球上の人たちみんなそうかもしれない。政治的なストレスを感じている人もたくさんいるわけで、ステイ・ホームで閉じ込められていること以上にみんなストレスを感じているんでしょうね。

―世界的にそのような状況下で、待望の新作『ザ・ビター・トゥルース』がリリースされます。実際には2020年発売予定でもあったようですね。

 当初の予定ではそうだったけど、そこには障害があってね。アルバム自体は去年の段階で完成していたのよ(笑)。

―新作を作りたいという構想はいつ頃から?

 2019年あたりからアルバムを作りたい……いや、作らなきゃと少しずつ考えていて。2017~18年は『シンセシス』(2017年)に伴うツアーで、その後も私たちだけのロック・ショウでツアーもしていたわ。それが終わったあたりから“やっぱりルーツに戻らなくちゃ。私たちのサウンドを再発見しなくちゃ! 近い将来に向けて、このラインナップで今のサウンドを作らないと!”ということになったのよ。

―やはり、ツアーの合間を見て作業に入るという感じですよね。

 2019年はライヴをしていたけど、ツアーの前後で一週間くらい集まって作曲のためのセッションを行なって。スケジュール感をハッキリと決めてはいなかったけど、曲の骨組みはできていて、クリエイティブな状態にいたの。2019年の終わり頃にはレコーディングに向けスタートが切れる状態で、すべての楽曲ができていたわけではなかったけど、いくつかレコーディングを開始して、去年3月のツアーに出るまでの時間を有効活用することにしたのね。今となってはあの時点で4曲完成させられていたのはラッキーだったと思うし、2020年中に発信もできた。リリースと制作を同時に行なうということは、ファンをいたずらに待たせないので、とても良かったとも思っているわ。

―純粋なスタジオ・アルバムとしては、前作『エヴァネッセンス』から10年という期間が空きました。当時、次作までにこれほどの時間が空くと思ってはいましたか?

 それはどうかしらね(笑)。正直なところ私は、1stアルバム(『フォールン』2003年)を除けば、今までアルバムを作るたびに“これが最後の作品よ”と思ってやってきた。インスピレーションに素直に従って、ハートのなかに閉まってあるものをすべて吐き出すことは、私にとって大切なことなの。クリエイターとして、バンドの一員としてやっていくということは、人によって捉え方が異なるとは思うけど、私は完全主義じゃないかと思うほどかなり真剣にやっていて、制作やツアーを始めるとそれが自分のすべてになってしまうのね。私の時間や心のなか、そして思想のすべてが音楽一色になって、その一方でそれらが終わって家族と一緒にいる時間になれば、また地に足のついた普通の生活に戻ることができて。

―あなたのイメージどおりとも言えそうです。

 だから私はその両者の間を行き来しているような感覚で、単に義務感だけではなく、“どうしてもそれをやらなければならない”という強い理由がなくてはならないの。

―なんとなく“そろそろ作るか”くらいの気持ちでは、行動に移せないと。

 そう、ただツアーをすることは例外で、私は常にファンと接していたいと思うから、それ以外に理由なんて求めてはいない。でも新しいアルバムを丸ごと作るとなると、新しいインスピレーションを得なくてはならないわ。何か大きくて、自分の言葉で語らなければならない理由が必要なの。同じような音楽をくり返し作り続けるなんてもってのほかね。そうやって真剣に作った音楽を人々が聴いてくれたら嬉しいし、そこにはいつだって初めて音楽を作ったときの燃えさかる炎のような衝動が欲しいの。

―今回、その制作に心を向けるインスピレーションがあったということですね。それは一体なんだったんでしょう?

 映画音楽やサウンドトラック、子供向け音楽を作っているときだったり、家族といるとき、子供が生まれたとき、そういったさまざまなことからインスピレーションを受けるけど、今回に関してはあまりにも伝えたいことがたくさんあって。バンドとして長くやってきて、特にこの10年の歩みで私は胸の奥にたくさんのことを感じてきた。そんな状況にも関わらず2020年はさらに強烈な一年だった。それで“ここで立ち上がらなくては!”というインスピレーションと決意を胸に秘め、私たちのまわりにある間違いに対して意思を表明することにしたの。アルバムをこの時期にリリースすることには意味があって、それだけ私は吐き出さなければならない想いがあったということなのね。

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